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相続の放棄について その②

更新日:2023.05.31

はじめに

相続の放棄について、前回は手続きに関するお話をしました。

今回の記事では、相続の放棄をするときの注意点や、相続の放棄をしても受け取ることができる財産について、紹介していきます。

 

相続放棄をするときの注意点や検討すべき点

相続放棄をするときには、どういったことに注意が必要になるのでしょうか。

 

相続放棄を検討するときに注意が必要なこと

相続放棄は、プラスの財産も含めた全ての財産の相続を放棄することです。

負債がプラスの財産を大幅に上回ってしまうような場合には、相続放棄を検討すべきでしょう。

しかし、よく調べてみたら負債よりもプラスの財産が多かったといって、相続放棄を撤回することはできません。

 

限定承認について

負債がどの程度あるのかわからないときは、「限定承認」という相続の方法を選択することもできます。

「限定承認」とは、もし負債があったとしても、プラスの資産の限度で相続するという制度です。この制度を利用すれば、マイナスの財産を負うリスクを避けて相続することができます。

単独で申述できる相続放棄と異なり、限定承認の申述は、他の相続人全員で行わなければなりません。

また、財産の内容によっては手続きが複雑となり、すべてが終了するまでに1年~2年といった長い期間かかることもあります。

 

相続放棄できない場合

民法921条で定められた行為をした場合、相続することを承認した(法定単純承認)とみなされ、相続放棄が認められないことがあります。

具体的には、相続人が相続財産を処分したとき、期限内に限定承認や相続放棄の手続きをとらなかったとき、相続人が限定承認や放棄の手続き後に財産を隠し、私的に使っていた場合などです。

 

<民法921条に定められた法定単純承認事由>

1、相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき。ただし、保存行為及び第602条に定める期間を超えない賃貸をすることは、この限りでない。

2、相続人が第915条第1項の期間内に限定承認又は相続の放棄をしなかったとき。

3、相続人が、限定承認又は相続の放棄をした後であっても、相続財産の全部若しくは一部を隠匿し、私にこれを消費し、又は悪意でこれを相続財産の目録中に記載しなかったとき。ただし、その相続人が相続の放棄をしたことによって相続人となった者が相続の承認をした後は、この限りでない。

 

具体的にどういった行為がこの民法921条に定められた行為になるのかというと、個別の判断になってしまうので、一律にあげることはできません。

相続放棄を検討しているのであれば、被相続人の財産は使わず、ポケットマネーで支払うなどするのが安心でしょう。

たとえ被相続人の借金の返済といえども、故人の財産から支払ってしまうと法定単純承認とみなされる恐れもありますので、債権者には「相続放棄を検討しているので」と、説明しましょう。

 

他の相続人への通知や財産の管理義務

相続放棄は単独で申述でき、相続放棄したことを他の相続人に通知する義務もありません。

裁判所から他の相続人に通知されるといったこともないので、他の相続人が相続放棄のことを知るのは大変です。

相続放棄をするときは、負債が多いといった理由なので、他の相続人や後順位の相続人に伝えてあげるのがいいでしょう。

他の相続人が相続放棄をしたかどうかを調べたい場合は、家庭裁判所へ照会をかけることで確認することもできます。

また、相続放棄をしても、他の相続人が相続財産の管理を始めるまでは、その財産の管理をする義務があります。

次順位の相続人がいなく、財産の管理を任せる人がいない場合は、裁判所に相続財産管理人の選任の申し立てをする必要があります。

 

続放棄と納税の義務

相続放棄をすると、被相続人の所得税や住民税などの支払いも原則的には不要となります。

しかし、固定資産税について、相続放棄をした時期によって支払い義務があるとされた例があります。

それは、固定資産税が1月1日時点での登記上の所有者に課税するとしているためです。

例えば、相続開始日が11月1日で、12月1日に相続放棄をした場合には、固定資産税の納付義務はありませんが、1月1日を過ぎて相続放棄した場合は、固定資産税の納付義務の可能性が出てきてしまいます。

少しのタイミングの違いとなると、不公平感はありますが、固定資産税がそうした課税制度である以上、仕方のないことなのです。

 

税務上の相続放棄の取扱い

民法上は、はじめから相続人でなかったという取り扱いになる「相続放棄」ですが、相続税の基礎控除の計算においては、相続放棄は加味しません。

相続税では、法定相続人の数によって課税される財産から差し引ける金額(基礎控除額)を計算しますが、ここでは相続放棄をした法定相続人も含めて計算します。

 

例)亡くなった人:父 法定相続人:妻、子3人 ※子のうち、1人が相続を放棄した

相続税の基礎控除額の計算式

【3,000万円+600万円×法定相続人の数】

例の場合の計算式

【3,000万円+600万円×4(妻、子3人)】……相続放棄をした子1人を含めて計算

 

相続放棄をしても受け取れる財産について

相続放棄をすると、すべての相続財産について受け取る権利がなくなります。

相続財産とは、亡くなった方の財産とされるものです。

つまり、相続財産とならないものは、相続放棄をしても受け取れる可能性があります。

 

受け取れる可能性があるのは、香典、死亡退職金、未支給の給与、死亡保険金、未支給の年金などです。

 

香典について

香典は喪主へされるものなので、相続財産ではありません。

 

死亡退職金・未支給の給与について

死亡退職金や未支給の給与は、就業規則で遺族に支払われることが定められている場合は、相続人固有の資産となります。

ただし、受取人についての定めがない場合や、被相続人が受取人とされている場合は、相続財産に含まれます。

 

死亡保険金について

死亡保険金も、受取人が誰かによって相続財産になるか否かがわかれます。

相続人が受取人であれば、相続放棄をしても受け取ることができます。

受取人の指定がない場合には、保険約款の内容次第となるため、約款の確認が必要です。

 

未支給の年金について

未支給の年金については、相続放棄をしても受け取れるとされています。

ただし、被相続人が亡くなった当時、被相続人と生計を一にしていた親族に限られます。

また、受け取れる順位も決まっており、

1位:配偶者、2位:子、3位:父母、4位:孫

5位:祖父母、6位:兄弟姉妹、7位:1位~6位以外の3親等内の親族

となります。

 

最後に

相続放棄は、相続人に認められた権利で、相続財産の一切を引き継がないという意思決定です。

相続放棄をすると、マイナスの財産だけでなく、プラスの財産も含めて相続することはできません。

手続きには、相続人となったことを知った日から3か月以内に、裁判所へ申し出て受理される必要があります。

あとから相続放棄を撤回することはできないので、負の財産がどのくらいあるかわからないときは、「限定承認」という相続方法を検討するのも一案です。

相続放棄は他の相続人にも影響することですので、トラブルを防止する意味でも他の相続人への配慮をするべきでしょう。

手続きや判断に心配な場合は、ぜひ専門家に相談されてください。

 


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