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NISAを相続したら?その注意点とは

更新日:2024.04.24

はじめに

2024年1月からNISAが新制度になりました。金融機関からNISAに関するセミナーなどの情報提供も増え、NISAに関心がある方も多いと思います。実際、NISAの利用者は右肩上がりで増加しており、今後はNISAを保有している方の相続も増えるでしょう。

そこで、今回はNISAを相続したときの手続きや注意点について説明します。通常の投資商品と違いがあるのか、どういったことに注意が必要なのかこの記事を参考にしてください。

 

そもそもNISAと通常の投資信託の違いとは?

NISAと投資信託は、NISAが非課税制度(小額投資非課税制度)であるのに対して、投資信託は金融商品であるという違いがあります。つまり、投資信託で利用できる非課税制度がNISAです。

NISAは英国のISA制度を参考にNipponのNを付けてNISAとし、2014年1月に開始されました。その目的は自助努力に基づく資産形成を支援・促進し、家計からの成長マネーの供給拡大を図るというものです。

制度開始後、NISAの利用者は増え続け、家計の安定的な資産形成ツールとして活用が進んでいることなどを踏まえて、2020年の税制改正大綱で制度の見直しが決定し、2024年1月から新たなNISA制度がスタートしています。

 

NISAの種類

2024年1月からスタートした新NISAには、「つみたて投資枠」と「成長投資枠」の2つの種類があります。ここでは、それぞれの内容と、旧制度からどのように変わったのかを紹介します。

つみたて投資枠

つみたて投資枠とは、一定の金額を投資信託で積み立てて運用を行い、資産形成していくものです。基本的に長期的な運用を目的としているため、少額から積立てられるようになっています。

新NISA制度では、非課税での保有期間が無期限となり、時限的制度であったNISA制度自体が恒久化されました。旧制度でのつみたてNISA利用者の70%が20~40代と若年層に多く利用されています。

成長投資枠

成長投資枠は、投資信託のほか上場株式にも投資できるため、つみたて投資枠よりも投資対象商品が多くなっています。

年間240万円まで投資可能で、非課税となる保有限度額は1,200万円です。一部除外されている商品もありますが、投資できる商品が幅広いため、比較的短期で資産形成したい場合にも向いているでしょう。

NISA制度新旧での違い

新NISA制度と旧制度の大きな違いは、つみたて投資枠と成長投資枠の併用が可能となったことです。旧制度では、つみたて投資枠を「つみたてNISA」、成長投資枠を「一般NISA」という名称でくくられていました。年間投資可能額や保有限度額は異なりますが、基本的な内容は新NISAと同様です。ただし、旧制度ではつみたてNISAか一般NISAのどちらかしか運用できませんでした。

新制度になり、つみたて投資枠と成長投資枠が併用できることで、長期的な運用をつみたて投資枠で行いながら、成長投資枠で株式投資を行うといった使い分けも可能です。

さらに、非課税保有期間が無期限となり非課税保有限度額も合わせて1,800万円となるなど、資産形成のためのツールとして進化したといえるでしょう。

 

相続財産にNISAがあった場合の手続き

年々利用者が増えているNISAですが、相続財産にNISA口座があった場合、相続手続きはどのように行うのでしょうか。NISAの相続手続きについて説明します。

証券会社に連絡する

相続財産に投資信託があることがわかったら、速やかに証券会社に連絡しましょう。金融機関によって書類は異なりますが、「非課税口座開設者死亡届出書」のような書類の提出を求められます。どの金融機関を利用していたか不明な場合は、上場株式であれば証券保管振替機構を通じて照会可能です。

NISA口座にある投資商品の相続税評価を行う

NISA口座で運用していた上場株式は相続税の対象となるため、相続税の課税評価額を算出しなければなりません。

上場株式の相続税評価額は下記の金額のうち、最も低い金額となります。

・相続開始日(亡くなった日)の終値

・相続開始日の当月の終値の月平均額

・相続開始日の前月の終値の月平均額

・相続開始日の前々月の終値の月平均額

NISA口座内の商品を相続人の口座に移す

遺言書や、遺産分割協議で相続の分割が決定した場合は、NISA口座内の商品を相続人の口座に移さなくてはなりません。移管できるのは、NISA口座ではなく課税口座です。相続人がNISA口座を保有していたとしても、NISA口座には移管できません。課税口座を持っていない場合には、開設の手続きが必要です。

 

NISA口座を移管する際の注意点

ここからは、NISA口座を移管する際の注意点について説明します。注意点は大きくわけて次の2点です。

・移管する口座は被相続人の口座と同一金融機関でなければならない

・相続した金融商品を非課税のまま持ち続けられない

移管する口座は被相続人の口座と同一金融機関でなければならない

相続したNISA口座の金融商品を移管できるのは、被相続人の口座と同じ金融機関の口座だけになります。そのため、同一金融機関に口座がない場合は口座開設が必要です。

金融機関を変更したい場合は、一度相続人の口座に移管したあとに、「口座振替依頼書」といった所定の書式を移管元に提出するなどして行います。

相続した金融商品を非課税のまま持ち続けられない

相続したNISA口座内の金融商品は、課税口座にしか移管できないため、非課税のまま保持することはできません。移管後は課税での運用となります。

また、相続人の課税口座に移管した商品を、同じ相続人名義のNISA口座に移管することもできません。そもそも、非課税となるのはNISA口座内で購入した商品に限るため、課税口座で購入した商品は非課税とはならないのです。

 

NISAと通常の投資商品の相続時の違い

NISAとその他の投資商品の相続時の違いは次の2つです。

・取得日と取得価額

・NISAでは所得税や住民税がかからない

それぞれについて説明します。

取得日と取得価額

相続は基本的に被相続人の地位を引き継ぐため、通常は投資商品の取得日や取得価額も被相続人が購入した時点のものとなります。

例えば、被相続人が2020年3月10日に1株1,000円で購入した通常の投資商品を、2023年2月10日に相続したとしましょう。このとき、相続時の時価が3,000円であっても、相続人の取得価額は被相続人が取得した価額の1,000円となります。

被相続人の取得日:2020年3月10日

被相続人の取得価額:1株1,000円

被相続人の死亡日:2023年2月10日

被相続人の死亡日の終値:1株3,000円

NISA以外の投資商品の取得価額:1株1,000円

一方、NISAの場合は、取得日と取得価額は被相続人を引き継ぎません。被相続人が亡くなった日の終値が、相続人の取得価額となります。これは、被相続人が亡くなった時点でNISAは終了し、新たに相続人が投資商品を取得するという考え方のためです。つまり、上記の例では相続人の取得日は2023年2月10日、取得価額は1株3,000円となります。

NISAでは所得税や住民税がかからない

通常の投資商品の場合、含み益には約20%の所得税がかかります。一方NISAでは非課税です。

もし相続した投資商品に含み益がある場合、NISA以外では相続税がかかるうえに、相続人は所得税と住民税も負担しなければなりません。しかし、NISAでは相続時までの含み益に対して所得税はかからないため、相続人の負担を減らすことができます。

ただし、相続後に発生した利益については所得税と住民税がかかりますので、売却時には申告を忘れないようにしましょう。

 

NISAは相続税の生前対策に活用できるか

新NISAは、活用次第で相続税の生前対策としての活用が可能です。例えば、所得が多い夫から専業主婦の妻へ贈与した現金をNISAで運用すると、夫婦で最大3,600万円分を非課税で投資できることになります。このとき、贈与額に注意が必要です。

夫婦間での生活に必要な資金の贈与は非課税となりますが、投資目的の贈与は非課税にはなりません。しかし、贈与税は年110万円までの基礎控除があり、これを超えない額で贈与を行えば非課税で贈与可能です。

18歳以上からNISA口座の開設ができるので、子どもへも同様のやり方で少額ずつ贈与を行い、NISAで運用することもできるでしょう。

名義だけ家族にするのはNG

相続の生前対策として家族のNISAを活用する場合は、NISAの管理や運用も名義人本人が行わなければなりません。

名義だけ子どもにし、実際の管理や運用は親がしていたという場合は、親の財産とみなされ相続時に課税される可能性があります。これは、子ども名義の銀行口座を親がつくり、親が支出をして預金するという名義預金と同じことです。名義預金は贈与とはならず、相続税の課税対象に含まれます。

相続税の生前対策として、コツコツ積み重ねてきた努力が水の泡とならないためにも、税理士に相談し確実な対策を行いましょう。

 

さいごに

NISAの相続について説明しました。NISAは2024年から新制度となり、制度の恒久化や非課税保有期間が無期限となるなど、さらに活用しやすくなっています。ただし、相続開始後は被相続人のNISAは終了し、課税での運用となる点に注意が必要です。

相続税の申告や確定申告で間違わないように、わからない場合には税理士に相談しましょう。また、NISAを活用した相続税の生前対策を検討している際にも、相続に強い税理士にアドバイスを受けることをおすすめします。

 

 

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