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相続で不動産を取得したときにかかる税金とは?

更新日:2023.08.30

はじめに

相続財産に不動産がある場合、もし取得したらどういった税金がどのくらいかかるのか?

心配になることもあるのではないでしょうか

この記事では不動産を取得した時点や、取得後にかかる税金についてお話していきます。

 

相続で不動産を取得した場合にかかる税金

不動産を相続するとかかる税金について説明します。

相続全体に関する税金と不動産特有の税金がありますので、不動産を相続する可能性がある方は特に不動産特有の税金についてお読みください。

 

相続税

不動産を相続すると相続税がかかります。

ただし、相続税には基礎控除という制度があり、課税の対象となる財産が基礎控除の範囲内であれば、相続税はかかりません。

基礎控除の額は次の式で求めます。

【3,000万円+600万円×法定相続人の数】

例えば現金、不動産、株式などを合わせて1億円の課税財産がある例で考えてみましょう。

相続人は妻、子ども2人の合計3人です。

基礎控除の額は3,000万円+(600万円×3人)=4,800万円となります。

相続税は、課税財産1億円から基礎控除を差し引いた残りの5,200万円に対して課されます。

このように、相続税は個々の財産に対して課税されるものではありません。つまり、相続した財産が不動産であるか否かではなく、課税対象の財産が基礎控除を上回った分で納税額が決まるということです。

 

登録免許税

不動産を相続した際にかかる税金が、登録免許税です。

登録免許税とは、不動産の所有権を移転したり、所有権の保存をしたりする際の登記にかかる税金です。

相続の場合は、亡くなった被相続人の名義から相続人の名義へ所有権の移転を登記します。これを相続登記といいます。

登録免許税の税額は、不動産の固定資産税の評価額をもとに計算します。

評価額は固定資産課税明細書に記載してありますが、市町村から取得することもできます。

ご自身で相続登記の手続きをする際は、「固定資産税課税標準額」ではなく「価格」または「評価額」と記載された金額で計算を行ってください。

税率は土地建物ともに、0.4%です。売買による登録免許税が2%ですので、相続登記は優遇されているといえます。

 

令和6年4月1日より相続登記が義務化

相続登記が令和6年4月1日より義務化されます。

相続登記はこれまで任意であったため、相続後に登記されず持ち主不明になった不動産が日本中に多数存在しています。

日本全土の所有者不明土地を合わせると、約420万ha(国土交通省平成28年調査による)に相当し、368万haの九州よりも大きいことが判明しました。

所有者不明土地は震災時の復旧や復興の妨げにもなるため、政府は法改正によって相続登記を促す方針です。

理由なく相続登記を怠ると、10万円以下の過料が科される可能性もあります。

義務化の対象となるのは、法律の施行後に発生した相続だけでなく、過去の相続も含みます。

 

不動産を所有している間かかる税金

不動産は所有している間にも税金がかかります。ここでは、不動産の所有にかかる税金について説明します。

 

固定資産税

固定資産税は、土地や家屋などの所有者に課される税金です。

毎年1月1日時点で所有している人を対象に税額が計算され、4~6月頃に納税通知が所有者の住所に送られます。

固定資産税の税率は市町村によって異なり、標準税率は1.4%と定められていますが、これを上回る税率を設定することも可能です。

1月1日時点の所有者に納税義務があるため、年の途中で売却をしても固定資産税の納税義務は翌年まで移りません。

では、納税義務者が亡くなっている場合、この固定資産税は誰が支払うのでしょうか。

遺産分割協議が成立していれば、不動産を取得する相続人が支払います。

遺産分割協議の成立前であれば、法定相続分によって各相続人で負担するか、相続人の代表者が立て替えて支払うことになります。

被相続人の未払い税金は相続財産から差し引けるので、この場合の固定資産税も相続財産から控除できます。

次に、被相続人が固定資産税の基準日前の10月に亡くなった場合で考えてみます。

基準日である翌年1月1日時点では所有者は亡くなっているため、固定資産税は被相続人の未払い税金とはなりません。

つまり、相続財産から未払い税金分を差し引くことができなくなります。

遺産分割が終わり不動産の相続人が決定していれば、その相続人に固定資産税の支払い義務があります。

遺産分割協議前であれば、法定相続分によって分けるか代表者が立て替えて支払います。

法定相続分によって分けて支払うと、あとで精算を行うのが大変になるのでその点も考慮して考えるといいでしょう。

次に、相続人の中に相続放棄を行った人がいた場合はどうなるでしょうか。

通常、相続放棄を行うと、固定資産税の納税義務は生じません。しかし、放棄の手続きが完了するタイミングによっては納税義務が発生する場合があります。

例えば、被相続人が亡くなった年内に相続放棄を行った場合は、1月1日時点で相続人ではないため、固定資産税の納税義務者ではなくなります。

しかし、年をまたいで相続放棄がなされたケースでは、1月1日時点で相続人であるため、固定資産税の納税義務者となる可能性があります。

相続放棄を行ったにもかかわらず、固定資産税の納税義務者となった場合には、納税後に相続人へ請求することになります。

納税通知がきたにも関わらず放置していると、最悪の場合財産を差し押さえられることもありますので、不明な通知を受け取ったときは市町村への相談が必要です。

 

都市計画税

都市計画税は、都市計画事業や土地区画事業の費用とすることを目的とした市町村税です。

住宅や商業施設が立ち並ぶ市街地や、将来的に市街地にしていく計画がある地区に不動産を所有する人に課されます。

税額は課税標準に税率をかけて求めます。自治体によって税率は異なりますが、0.3%を超えることはありません。

都市計画税も固定資産税と同じく、1月1日時点の所有者に課税され、固定資産税と併せて納付することになっています。

 

相続した不動産を売却するとかかる税金

相続した不動産を売却して利益が出た場合には、その利益に対して税金がかかります。

ここでは、不動産売却にかかる税金と計算方法について説明します。

 

譲渡所得税

不動産を売却して得られた利益を譲渡所得といい、この譲渡所得にかかる税金が譲渡所得税です。

譲渡所得税は、他の所得税などとは別に税額計算が必要になります。

譲渡所得の計算は下記の計算式で求めます。

【譲渡所得=売却価格―(取得費+譲渡費用)】

取得費とは、不動産の購入代金やリフォーム費用、登記費用、仲介費用といった購入時の諸費用です。

譲渡費用とは、売却時にかかった仲介費用や解体費用になります。

この譲渡所得に税率をかけて、譲渡所得税を割り出します。

税率は所有していた期間によって分けられ、所有期間が譲渡した年の1月1日時点で5年以下の場合は39%、5年を超える場合は20%と定められています。

相続の場合、被相続人の地位を引き継ぐため、所有期間も被相続人が取得した日から起算します。

 

不動産の取得費が分からない場合

相続した不動産を売却する際、取得費が不明のことがあります。

当時の契約書などが残っていれば取得費がわかりますが、代々受け継いできた不動産などはそうした書類がなかったり、紛失していたりします。

取得費が不明の場合は、売却価格の5%を概算取得費とします。

譲渡所得の申告納税は売却した翌年の確定申告期に行うので、あらかじめ税額がいくらになるか把握しておき、納税資金を残しておくのがいいでしょう。

 

譲渡所得の特例

相続した不動産を売却する際に、譲渡所得税が軽減される「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例」という制度があります。

この特例は、一定の要件を満たした空き家を売却する場合、譲渡所得から最高3,000万円を控除できるというものです。

ただし、相続した日から3年後の年末まで(2023年12月31日まで)に売却しなければいけません。

一定の要件は下記の通りです。

・相続開始直前において被相続人が居住していたこと。(※被相続人が要介護認定を受けて老人ホームに入居していた場合は、その直前まで居住していればよい)

・昭和56年5月31日以前に建築されたこと。

・区分所有建物登記されている建物でないこと。

・相続の開始の直前において被相続人以外に居住をしていた人がいなかったこと。

・売った人が、相続または遺贈により被相続人居住用家屋および被相続人居住用家屋の敷地等を取得したこと。

・被相続人所有の建物だけ、もしくは建物と土地、または建物を取り壊して更地を売却したこと。ただし、建物の取り壊しから譲渡まで事業や貸付、居住に使用されていないこと、建物の譲渡においては譲渡時に一定の耐震基準を満たしていること。

・売却代金が1億円以下であること。

・売った家屋や敷地などについて、他の特例の適用を受けていないこと。

・同一の被相続人から相続または遺贈により取得した、被相続人居住用家屋または被相続人居住用家屋の敷地について、この特例の適用を受けていないこと。

・親子や夫婦など特別の関係がある人に対して売ったものでないこと。

 

相続人以外が遺贈などで不動産を取得した場合の税金

相続人以外の第三者が遺言によって不動産を取得した場合には、どのような税金がかかるのか説明します。

 

遺贈には2種類ある

遺贈とは、遺言書によって相続人や第三者へ財産を引き継がせることをいいます。

遺贈には大きく分けて特定遺贈と包括遺贈という2つの種類があり、どちらの遺贈なのかによってかかる税金や税率に違いが生じますので注意が必要です。

 

特定遺贈によって不動産を取得した場合

特定遺贈とは、特定の財産を指定した人に相続させることです。遺贈する財産と人が明確に定められている必要があります。

通常、不動産を新たに取得した際には不動産取得税がかかりますが、相続によって取得した場合にはかかりません。

ただし、特定遺贈によって第三者が取得する場合には不動産取得税がかかります。

税率は通常4%ですが、令和6年3月31日まで土地と住宅は3%に減税されています。住宅以外の建物は4%です。

特定遺贈でも、相続人が取得する場合は通常の相続同様、不動産取得税はかかりません。

 

包括遺贈によって不動産を取得した場合

包括遺贈とは、財産内容を特定せずに指定した人に相続させることです。例えば、「遺産の1/2をAに遺贈する」といったものが包括遺贈となります。

包括遺贈の場合、遺贈を受ける人が第三者であっても不動産取得税はかかりません。

ただし、包括遺贈ではプラスの財産だけでなく、負債といったマイナスの財産も遺贈される点に注意が必要です。

 

特定遺贈、包括遺贈両方に共通する税金

特定遺贈、包括遺贈どちらにもかかる税金は相続税と登録免許税です。

遺贈というと贈与税と思う方もいらっしゃいますが、遺贈にかかるのは相続税です。

不動産に関わらず、遺贈によって第三者が相続財産を取得した場合には、相続税が20%加算されます。

また、登録免許税も相続人以外が取得した場合は2%となり、相続人の0.4%よりも高くなります。

 

最後に

相続によって、不動産を取得した場合にかかる税金について説明しました。

相続時、不動産をもち続けるとき、売却するときそれぞれに税金が関わってくることがおわかりいただけたと思います。

相続する際には、その後にかかる税金についても事前に把握しておくのをおすすめします。

税金に関することは複雑な内容も多いため、相続に詳しい税理士に相談すると安心です。

 

 


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