更新日:2025.09.22
Contents
亡くなった人から生前に、お金や家をもらっていた場合、「それでも相続を放棄できるの?」と不安に思う人がいます。 結論から言うと、生前贈与を受けていても相続放棄は可能です。 しかし、贈与された時期や金額によっては、思わぬトラブルに巻き込まれる可能性があります。また、相続を放棄しても、相続税を払わないといけない場合もあるのです。 この記事では、生前贈与と相続放棄の関係や、その両方に関わる注意点について解説します。
亡くなった人(被相続人)から、生前に何かをもらっていたとしても、相続人は相続放棄ができます。 まずは、生前贈与と相続放棄の関係について、次の3つのポイントを見ていきましょう。
相続放棄とは、亡くなった人の財産のうち、プラスの財産(預貯金、不動産など)もマイナスの財産(借金など)も、すべて引き継がないことです。 相続放棄は、相続が発生したとき(亡くなったとき)にしかできません。 また、家庭裁判所に申し出て、認められる必要があります。この手続きは、自分が相続人だと知ってから3か月以内に行わなければなりません。 期限を過ぎてしまったり、亡くなった人の財産を使ってしまったりすると、相続放棄は認められなくなります。
なぜ、生前にお金をもらっていても相続放棄ができるのでしょうか? それは、生前贈与と相続放棄はまったく別の行為だからです。 「亡くなる前にもらった財産は相続財産だ」と勘違いして、その財産を売ったり使ったりしたせいで、「相続放棄ができなくなったのでは?」と心配する人がいます。 しかし、相続は亡くなったあとにしか発生しません。つまり、亡くなる前にお金や物をもらった場合は、それはすべて贈与にあたります。 したがって、生前にもらった財産をどうしようと、相続放棄には影響しないのです。
相続放棄をすると、すべての財産を相続しないので、相続税を払う義務もなくなると思いがちです。 しかし、生前贈与を受けていた場合、遺産の総額によっては、贈与された分にかかる相続税を払わなければならない可能性があります。 相続税は、借金や葬儀費用などを除いた遺産の総額が、基礎控除額よりも多い場合に課税されます。 基礎控除額は「3,000万円+(600万円×法定相続人の数)」で計算されます。 ここで注意すべきなのは、この遺産の総額に、亡くなる前の一定期間に行われた生前贈与の分も含まれることです。 たとえ相続放棄をしていても、生前贈与の分を加えた遺産の総額が基礎控除額を上回れば、相続税を支払う必要があります。
相続税を不正に逃れようとする行為を防ぐため、相続税では、亡くなる前の一定期間に行われた贈与を遺産に含めて計算します。 この一定期間は、2023年までに行われた贈与は亡くなる前3年間ですが、2024年以降に行われた贈与は、徐々に期間が延びていき、最終的に7年間になります。 この加算の対象となるのは、金額にかかわらず、期間内に行われた相続人へのすべての生前贈与です。たとえば、年間110万円以下の贈与(暦年贈与)であっても、加算しなければなりません。
生前に土地などの不動産をもらっていた場合でも、相続放棄は可能です。
相続放棄をしても、贈与された不動産の所有権は変わりません。
ただし、亡くなる前の一定期間にもらっていた不動産は、その贈与された時の価値を遺産に含めて計算します。すでに贈与税を払っている場合は、その分を相続税から差し引いて計算します。
生前贈与と相続放棄には、次のようなリスクがあります。
詳しく見ていきましょう。
亡くなった人に借金がたくさんあった場合、お金を貸していた人(債権者)は、生前贈与を取り消すよう求めることができます。 たとえば、親に多額の借金があることを知っていながら、借金から逃れるために、子どもが親から多額の贈与を受けた場合などです。 この場合、債権者は「贈与によって、自分たちが借金を回収する権利が害された」と主張し、贈与を取り消すよう裁判所に求めることができます。
遺留分とは、兄弟姉妹以外の法定相続人に認められている、最低限もらえる遺産の取り分のことです。 特定の相続人だけが多額の生前贈与を受けると、他の相続人がもらえる遺産が減ってしまいます。そのため、他の相続人が「遺留分を返してほしい」と要求してくる可能性があります。 ただし、相続放棄をした人は「最初から相続人ではなかった」とみなされるため、他の相続人から遺留分を請求されにくいという考え方もあります。
相続放棄は、一度手続きを終えてしまうと、あとから撤回することはできません。 手続きをしたあとに、借金だと思っていた財産の中に価値のあるもの(プラスの財産)が見つかっても、それを相続することはできないのです。 相続放棄の手続き期限は3か月と短いため、後から財産が見つかることも少なくありません。 後悔しないように、相続放棄をする際は、慎重に検討することが大切です。
「借金は相続したくないけど、プラスの財産があるなら相続したい」という人には、「限定承認」という方法があります。 これは、プラスの財産の範囲内で借金を返済すればよい、という制度です。 ただし、限定承認は、相続人全員の同意が必要となります。これは、ひとりで手続きができる相続放棄と違う点です。 自分に合った方法をよく考えて手続きをすることが大切です。
生前贈与と相続放棄の関係について解説しました。 生前贈与を受けていても相続放棄は可能ですが、贈与の時期や金額によっては、トラブルに発展する可能性があります。 また、相続放棄は一度行うと取り消しができないため、慎重に判断することが必要です。
相続放棄以外にも「限定承認」という方法もあります。何が自分に合っているか、よく考えて手続きを行いましょう。 判断に迷った場合は、税理士や司法書士といった専門家に相談することをおすすめします。
********
名古屋市の相続相談なら【さくら相続支援協会】
また、税理士法人アイフロントでは相続のご相談(1時間程度)は無料で承ります。お気軽にお電話ください!
電話 0120-003-396
お問合せ受付時間 平日9時から18時
名古屋市の税理士法人アイフロント