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相続放棄は生命保険金の受取りに影響する?について解説

更新日:2025.04.28

はじめに

相続放棄が受理されたあとに、生命保険金の受取人になっていることがわかったというケースは少なくありません。そこで問題になるのが、相続放棄をしていても生命保険金は受け取れるのかということです。結論としては、条件を満たしていれば受け取れます。では、その条件とはなにか、また生命保険金を受け取った場合の課税関係はどうなるのかについて解説します。

 

相続放棄をしても生命保険金は受け取れるか

一定の条件を満たした生命保険金は、相続放棄をしても受け取れます。相続放棄とは、被相続人(亡くなった人)の財産の一切を受け取らないとするものです。では、なぜ生命保険金は相続放棄をしても受け取れるのでしょうか。それは、生命保険金は相続財産ではないからです。生命保険金は、受取人固有の財産として扱われます。相続財産でない以上、相続放棄が生命保険金の受け取りに影響を及ぼすことはないというわけです。

 

相続放棄後に生命保険金を受け取れる条件

相続放棄が保険金の受け取りに影響しないといっても、すべての保険金に当てはまるわけではありません。契約内容や保険の種類によって、相続放棄後に受け取れない可能性もあるので確認しておきましょう。

相続放棄後でも受け取れるケース

相続放棄後に受け取れる生命保険金は次のとおりです。

◇受取人に相続放棄した相続人が指定されているもの

◇受取人指定なしの場合「受取人=法定相続人」とする保険約款が定められているもの

そもそも、生命保険金の受取人になっていなければ、保険金は受け取れません。受取人として指名されていれば問題ありませんが、保険契約では受取人を定めないものもあります。その場合は、保険約款を確認し、指定がない場合の受取人が誰になるのか調べなければなりません。一般的には、法定相続人が受取人となると定められていることがほとんどです。相続放棄をしても法定相続人という地位は変わらないため、この場合も保険金を受け取れます。

相続放棄後に受け取れないケース

次のような保険金は、相続放棄後に受け取ることができません。

◇亡くなった人が保障の対象となっている医療保険(入金給付金や手術給付金)

◇亡くなった人が契約者となっている保険の解約返戻金

亡くなった人に支払われる保険金は、相続財産に含まれます。相続財産としての保険金は、相続放棄をした人は受け取れません。また、保険は「契約者(保険料の支出者)」「被保険者(保険をかけられている人)」「受取人」の3者が関係します。このうち、契約者が死亡すると、その保険契約は終了し解約返戻金が支払われます。解約返戻金の支払先は通常、契約者(亡くなった人)であるため、解約返戻金は相続財産となり、こちらもまた相続放棄を行った相続人は受け取れません。

 

相続放棄後に生命保険金を受け取る際の注意点

相続放棄後に受け取った生命保険金にも、税金がかかります。ただし、通常の相続とは異なるルールが適用されるので注意が必要です。以下で詳しくみていきましょう。

相続税の非課税枠は対象外となる

相続で生命保険金を受け取った場合、非課税枠が適用されます。非課税枠の計算式は次のとおりです。

【500万円×法定相続人の数】

「法定相続人の数」には、相続放棄をした相続人も含めて考えます。ただし、相続放棄した人はこの非課税枠が使えません。

例えば、3000万円の死亡保険金を、1500万円ずつA・Bの2人で受け取るとします。Aはすでに相続放棄の手続きを行っている状態です。この場合に適用できる非課税枠は1000万円(500万円×2人)となります。ただし、相続放棄をしているAは非課税枠が利用できません。それぞれの課税価額がどのようになるのか、以下で計算してみます。

計算式は次のとおりです。

※国税庁タックスアンサー「No.4114 相続税の課税対象になる死亡保険金」より

A:1000万円(非課税の適用なし)

B:1500万円-1000万円×1500万円/1500万円=500万円

Aは非課税枠を適用できるBに比べて、500万円高い課税額となりました。相続放棄を行う際には、こうした点も考慮する必要があります。

相続税の基礎控除は受けられる

相続税には、基礎控除といって一定額を相続財産から差し引ける制度があります。基礎控除額は【3000万円+600万円×法定相続人の数】で求めますが、「法定相続人の数」には相続放棄した相続人も含めて考えます。もし、生命保険金を含めた相続財産の総額が基礎控除を下回った場合、相続税は生じません。生命保険金は「受取人固有の財産」と説明しましたが、相続税額の計算では「みなし相続財産」として遺産に含めることとされています。つまり、生命保険金を遺産に含めた遺産総額が基礎控除以下であれば、相続放棄を行った相続人も相続税がかからないということです。

相続税ではなく、所得税や贈与税がかかることもある

保険金は、「契約者(保険料の負担者)」「被保険者」「受取人」の関係によって、相続税ではなく所得税や贈与税が課税されるケースがあります。

所得税となるのは、「契約者(保険料の負担者)」と「受取人」が同一の場合です。例えば、妻の生命保険の契約者である夫が、妻が亡くなった際に受取人になるといったことがあります。保険料を負担していた人が、保険金を受け取るということです。この場合の保険金は、一時所得または雑所得となるため、所得税を支払わなければなりません。

また、「契約者(保険料の負担者)」「被保険者」「受取人」が全て別々の人の場合には、贈与税がかかります。被保険者が妻、契約者が夫、受取人が子どもといったケースでは、契約者である夫から子どもに保険金を贈与したと考えられるためです。

所得税や贈与税が課された生命保険金は、「みなし相続財産」にもならないため、当然ながら相続税の基礎控除も受けられません。どの税金になるのかわからないときは、税理士や税務署に相談するのがいいでしょう。

 

生命保険金を受け取ったあとに相続放棄はできるか

相続放棄後に生命保険金が受け取れることは、上記で説明してきたとおりです。では、生命保険金を受け取ったあとに相続放棄はできるでしょうか。遺産の一部でも使ってしまうと相続放棄はできなくなるため、不安に思う方もいらっしゃるでしょう。保険金受取後でも相続放棄できるか、以下で説明します。

生命保険金受取後に相続放棄できる場合

生命保険金が受取人固有の財産であるときには、保険金を受け取ったあとでも相続放棄できます。受取人固有の財産となるのは、受取人に指定されているものや、受取人の指定がなくても、保険約款で法定相続人を受取人とすると定められているものです。これらは、契約上受取人に直接支払われるもので、被相続人の財産とはなりません。したがって、保険金を受け取っても相続放棄は可能です。

生命保険金受取後に相続放棄できない場合

被相続人に支払われる保険金を受け取った場合には、相続放棄ができなくなります。受取人が本人(被相続人)の保険金は、遺産の一部です。遺産に含まれる保険金を受け取る行為は、処分したことと同じとみなされます。つまり、保険金を受け取ったことが遺産を処分したことになり、相続放棄の要件を満たさなくなるのです。相続放棄を検討する際には、保険金の受取人が誰であるかしっかりと確認しましょう。

 

相続放棄についてわからなければ専門家に相談を

相続放棄と生命保険金の受け取りの関係について説明しました。生命保険金は基本的に、受け取る人固有の財産となるため、相続放棄後であっても受け取れます。また、生命保険金を受け取ったあとでも相続放棄が可能です。ただし、亡くなった人が受取人になっている保険金や、亡くなった人が契約者として受け取る解約返戻金は異なります。これらは遺産となるため、相続放棄をした人は受け取れません。また、遺産である保険金を受け取るなどすると、相続放棄自体ができなくなります。

相続放棄は、生命保険の非課税枠が適用できなくなるといったデメリットもあるので、相続放棄を行うかどうか迷うときには、税理士などの専門家に相談することをおすすめします。

 

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