更新日:2024.01.11
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親が経営者である場合、相続の手続きはどうなるのか心配な方も多いと思います。
特に、会社経営では多額の借入れを行っていることもあり、そうした借入れについても不安でしょう。
この記事では、経営者が亡くなった場合の相続手続きや注意点について説明します。
既に相続が発生している方は手続きの参考に、まだ相続が発生していない方は今後の対策にお役立てください。
会社経営者の親が亡くなった場合、個人の資産を相続する手続きと、会社運営に関する手続きが必要になります。
非上場会社では、社長の存在が会社そのものという法人も珍しくありません。
そのため、社長と法人を一体として考えてしまいがちですが、法的には個人と法人は全く別の人格です。
法人の人格とは法的な行為を行えるもので、たとえば、銀行の口座開設や契約、売買、訴訟などがあります。
つまり、法人は全くの別人であるため、社長が亡くなっても法人の資産や権利は相続されないということです。
では、経営者が亡くなったとしても個人の相続と同じなのかというと、そうでもありません。
通常、非上場会社の社長は会社の株主でもあります。株式は個人の資産として相続され、相続人が株主となります。
上場会社の株式の場合は売買も簡単に行えますが、非上場会社の株式は同じようにはいきません。
また、株主は会社の意思決定にも関わるため、株主が社長1人だった場合にはその後の会社運営が行えない可能性もあります。
会社経営者の相続では、会社運営を左右する重要な手続きもありますので、専門家の力を借りながら進めることも大切です。
経営者の相続では、主に以下の資産に相続税が課せられます。
それぞれについて詳しくみていきましょう。
経営者が保有していた自社株に対して相続税がかかります。
上場会社の場合、株式の価格は明らかですので大きな問題はありません。
参考までに、上場会社の株式の相続税評価額の計算方法をお伝えします。
計算方法は【1株あたりの株価×株数】です。
1株あたりの株価は、以下の4つのうち最も低い額を適用します。
①相続開始日の終値
②相続開始日の月の終値の平均額
③相続開始日の前月の終値の平均額
④相続開始日の前々月の終値の平均額
相続開始日とは、被相続人が亡くなった日です。終値はYahoo!ファイナンスなどで調べられます。
一方、非上場会社では株価を算定しなければなりません。
非上場会社の株価の算定については、別記事にて説明していますのでそちらをご参照ください。
社長から会社へ貸付を行っていた場合、その貸付債権に相続税がかかります。
会社の資金繰りが悪いときには、社長の個人資産から会社へ貸付を行うことが少なくありません。貸付債権は返済されることが前提であるため、税法上は資産と同様に取り扱われます。
貸付金が返済されなければ、相続人にとってはマイナスの財産となるだけです。
まだ相続が発生していない方は、社長の会社への貸付債権がどのくらいあるか把握しておきましょう。
経営者の親の相続で気を付けたいのは、社長が会社に借入れをしている場合です。
この会社からの借入れも、マイナスの資産として相続の対象となります。
会社からの借入れは、社長も認識していないことが少なくありません。
たとえば、社長個人の費用を会社のカードで支払い、精算されずに会計上残っている場合も社長の債務です。
中小企業では法人と社長の財布の境界が曖昧であることが多く、こうした会計上の債務が膨らむ事例が多くあります。
会社から社長への貸付は利息が生じますので、長年気が付かずに放置していると多額の借入れに成長してしまいます。
思わぬ債務を相続しないためにも、生前に会社からの借入れがないか確認し、早めに対策を行うことが大切です。
会社が使用しているもののなかに社長名義の資産があれば、それは社長個人の資産として相続税の対象となります。
たとえば、社屋を建てている土地が社長名義であるなどです。
小規模の会社では、社長個人の資産と会社の資産が混在し、分かりづらくなっているケースが多くあります。
相続財産の漏れがないように充分に確認を行ってください。
社長が亡くなった際には、事業を引き継ぐ人を決めなくてはいけません。
社長という肩書は商習慣上使われている呼び名で、法的には代表取締役や取締役といった呼称となります。
会社の意思決定に関わる機関が取締役であり、その取締役を代表するのが代表取締役です。一般的には、代表取締役を社長と呼称していることが多いでしょう。
後任の代表取締役を決定する方法は、取締役会を設置しているかいないかで変わります。
取締役会は上場会社(公開会社)や監査役会設置会社、監査等委員会設置会社で設置が義務付けられていますが、非上場会社では設置するかどうかは任意です。
では、後任の社長を決定する方法について、取締役会設置会社と、非設置会社の場合とを比較してみていきましょう。
取締役会設置会社では、代表の選任を取締役会で決議します。
代表取締役(社長)が亡くなっても、取締役が3人以上いる場合は取締役の中から代表取締役を選任できます。
代表取締役が亡くなって取締役が2人以下になった場合は、取締役が3人以上になるよう、新しい取締役の選任を株主総会を通じて行わなければなりません。
新取締役を入れたうえで、取締役会にて代表の決議を行います。
取締役会を設置しない会社では、代表取締役の選任は必須ではありません。取締役会非設置会社では、各取締役が会社を代表できるからです。
代表取締役を選任する場合には、株主総会の決議によって決まります。
被相続人が株主であれば株式は相続人が相続しますが、相続人が複数いる場合には注意が必要です。
相続した株式は、遺産分割協議が整わない間は複数の相続人での準共有状態となります。
株主総会で議決権を行使するには共有持ち分の過半数の同意が必要なため、相続人が多いほど時間も手間もかかるのです。
迅速な経営判断を行うためにも、株式の相続は可能な限り特定の相続人が相続することが望ましいといえます。
社長が亡くなったことにより事業の継続を断念する場合には、会社の清算手続きが必要です。
精算の手続きとして、株主総会で特別決議を行います。議決権を持つ株主が過半数出席し、その3分の2以上の賛成で会社の解散が可能です。
会社が債務超過になっている場合には、破産手続や特別清算の手続きが必要になります。
この記事では、経営者である親から相続をうける場合、事業を引き継ぐのか否かで
それぞれ手続きが変わることを紹介しました。
次回は、個人保証があったときなどの場合を紹介いたします。
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