更新日:2023.10.16
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相続税対策として多く活用されているのが生前贈与です。
贈与を行えば、相続時の財産を減らせると安心していませんか?
贈与を行うタイミングによっては、相続財産に加算する必要があります。
この生前贈与の相続時の取扱いについて解説していきます。
相続税の計算では、生前に贈与された一定の財産を相続財産に加算して計算するというルールがあります。これを「持ち戻し」といいます。
例えば、息子が父から100万円の贈与を受けて、その後すぐに父が亡くなったとします。
相続税の計算は、亡くなった父の相続財産に、息子がもらった100万円を加算して行います。
持ち戻しの対象となる贈与は、法定相続人が受けたものに限られます。
つまり、上の例でいえば息子の配偶者や孫が受けとった贈与は、持ち戻す必要はありません。
注意が必要なのは、遺言書で相続財産を引き継ぐ指定をされた受遺者です。受遺者となった人は、法定相続人でなくても持ち戻しの対象になります。
既にもらっている財産をなぜ戻さなければいないのか、もらった財産は全て対象となるのかこの後の章で説明します。
これまで、相続税の持ち戻しは、亡くなる前3年以内に行われたものと決められていました。
例えば、2015年10月1日に亡くなった場合は、2012年10月1日から亡くなるまでにもらった財産が対象です。
この持ち戻しの対象期間が「亡くなる前7年以内」に変わります。
2023年度税制改正大綱によって変更がまとめられ、2024年1月1日以降の贈与から適用されます。
段階的に持ち戻し期間が延長され、例えば2027年9月1日に相続が発生した場合は、3年9か月1日の持ち戻し期間となります。
緩和措置として、相続開始前3年を超えた期間、つまり相続開始前4~7年の間に贈与された財産から100万円を差し引く規定が設けられました。
年100万円ではなく、4年間で100万円です。
2027年9月1日に相続が発生したとすると、2024年1月1日~8月31日までに贈与された分から100万円を引けます。2031年9月1日に相続が発生した場合は、2024年9月1日~2028年8月31日までに受けた贈与から100万円を差し引いて持ち戻します。
生前贈与は相続税対策のひとつとして利用されてきました。
贈与税は年110万円まで非課税なので、この非課税枠を使って毎年贈与を行う(暦年贈与)ことで相続財産を減らせます。
「持ち戻し」はこの駆け込み贈与を阻止する目的もあります。その他、特定の相続人に生前贈与を行うことで、相続人の公平性を損なうため「持ち戻し」があるとも言われています。
個人から財産を取得したときに課せられる贈与税は、そもそも相続税を補完する役割をしています。
生前に財産を贈与し、相続税を逃れようとするのを防止するためです。相続税に比べて贈与税の税率が高く設定されている理由はここにあります。
今回の持ち戻し期間の延長は、高齢化によって資産移転の時期が遅くなっていることから、若い世代へ早期の資産移転を促す効果を期待されています。
相続時に相続財産に加算しなければならない生前贈与には、下記の2つがあります。
1, 法定相続人への亡くなる前7年以内の贈与
2, 相続時精算課税制度を利用した贈与
法定相続人への亡くなる前7年以内の贈与と同様に、相続時に加算が必要なのが「相続時精算課税制度」を利用した贈与です。
2023年度税制改正大綱では相続時精算課税制度についても見直しがありましたので、下記で説明します。
60歳以上の父母または祖父母から、18歳以上の子や孫へ財産を贈与する際に選択できる制度です。
同一の贈与者から受ける贈与は、合計2,500万円まで贈与税がかかりません。2,500万円を超えた分からは一律20%の贈与税がかかります。
相続時精算課税制度の適用を受けるには、税務署への届け出が必要です。
この相続時精算課税制度は贈与者ごとに設定できます。
例えば、祖父から孫へ相続時精算課税制度を利用して1,500万円の贈与があったとします。
その後、今度は祖母から1.500万円の贈与を受けました。孫は祖父母から合計3,000万円の贈与を受けていますが、相続時精算課税制度は贈与者ごとの設定なので、祖父からも祖母からもそれぞれ残り1,000万円までは非課税で受け取れます。
同様に祖父は相続時精算課税制度を、祖母は暦年贈与を各々選択することも可能です。
相続時の税額計算では非課税枠の2,500万円を含む、贈与分全てを相続財産に加算して行います。
非課税枠を超えた分の既に納めた贈与税があれば、相続税から差し引いて計算します。相続税よりも納めた贈与税が多ければ還付を受けられます。
相続時精算課税制度を選択すると、通常の贈与である暦年課税へは変更できません。
つまり、贈与税の110万円の非課税枠は利用できないということです。
2023年度の税制改正大綱では、この制度の不便さを緩和する変更が盛り込まれています。
これまで相続時精算課税制度を選択後は、少額の贈与であっても毎年申告が必要でした。
これが、年110万円以下の贈与であれば申告が不要になります。つまり、暦年課税の非課税枠110万円と同じような使い方ができるのです。
もちろん、年110万円を超える贈与をした場合は贈与税の申告が必要です。
贈与の目的と状況によって、暦年贈与と相続時精算課税制度のどちらを利用するか判断が必要です。
短期間に多額の贈与を行いたい場合は、相続時精算課税制度を利用するメリットが大きいでしょう。
相続時精算課税制度では、相続時に加算する財産の価値を贈与の時点で評価します。
例えば、会社を経営していてこの先好業績が望める場合は、株価が高くなる前に贈与することで、自社株対策として相続時精算課税制度を利用できます。
相続開始前7年以内の暦年贈与も、相続時精算課税制度も、どちらも相続時に既に納めた贈与税は差し引いて計算できます。
ただし、相続税額を超えて納めた贈与税が還付されるのは、相続時精算課税制度のみです。暦年贈与は還付されません。この点にも注意が必要です。
相続時に加算される生前贈与には大きく分けて、1法定相続人への亡くなる前7年以内の贈与、2相続時精算課税制度を利用した贈与の2つがあります。
相続開始前の一定期間内に行われた贈与を、相続時の財産に加算して相続税を計算することを「持ち戻し」と言い、相続人の公平性の確保と相続税逃れを防止するために設けられました。
これまでは相続開始前3年以内でしたが、7年以内に延長されます。2024年1月1日以降の贈与から対象です。
相続時精算課税制度は利用開始時に届け出が必要ですが、年110万円以下の贈与であれば申告は不要です。
同一贈与者からの贈与は合計2,500万円まで贈与税がかからず、超えた分には一律20%が課税されます。
相続時には、贈与を受けた全額を相続財産に加算しなければなりません。すでに納めた贈与税分は相続税から差し引き、相続税よりも納めた贈与税が多い場合には還付を受けられます。
暦年贈与も相続時精算課税制度も、贈与税が一定額非課税になるメリットはありますが、相続財産に加算して相続税を計算しなければならないことに注意してください。
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