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相続財産の管理人とは?

更新日:2023.08.02

はじめに

相続財産管理人はどういうことをするのか、なぜ必要なのか分からないという方へ相続専門の税理士が解説します。

相続財産管理人は令和5年4月1日に法改正が行われ、「相続財産の清算人」に名称が変更されました。ここでは改正後の内容について説明します。

相続財産管理人とはどういう人か、費用はかかるのか、必要な手続きは何かということを、この記事を読んで参考になれば幸いです。

 

相続財産管理人とは

相続財産管理人とは、相続人がいない場合や相続人全員が相続放棄を行った場合に、相続財産を管理し清算などの手続きを行う人です。

令和5年4月1日の法改正で名称が「相続財産の清算人」に変わりました。法改正によって変更された点については後の章で説明します。

 

どういう場合に相続財産管理人が必要なのか

相続財産管理人が必要になるのは、下記2つのケースです。

  • 相続人がいない
  • 相続人全員が相続放棄をした

 

相続人がいないということは被相続人(亡くなった方)が負っていた借金があっても、債権者への支払いを行う人がいないということです。また、相続する人がいない遺産は国の所有物となりますが、その手続きを行う人も必要です。

 

誰がどのようにして選任するのか

相続財産管理人を選任するのは、家庭裁判所です。家庭裁判所が申立てに基づいて適切な人を選任します。

相続財産管理人になるために特別な資格は必要ありません。候補者がいる場合は、被相続人との利害関係の有無などを考慮して決定されます。弁護士や司法書士など法律の専門家が選任されることもあります。

 

申立てできる人とは

相続財産管理人の選任申立てを行えるのは、利害関係人と検察官です。

利害関係人とは、被相続人の債権者や特定の財産を遺贈された人、内縁の配偶者などの特別縁故者が想定されます。

特別縁故者は債権などを清算したあとに、残りの財産から分与を得られるため利害関係人となります。

 

相続財産管理人にかかる費用

相続財産管理人が弁護士や司法書士の場合、報酬が発生します。親族が相続財産管理人に専任された場合は必ずしも報酬は必要ではありません。

報酬額は管理するための手間や手続きの専門性に応じて、家庭裁判所が決定します。

下記では、弁護士や司法書士への報酬の相場や申立てにかかる費用について説明します。

 

相続財産管理人への報酬

相続財産管理人に弁護士や司法書士などの専門家が選任された場合、報酬の相場は月額1~5万円となることが多いでしょう。

財産が多かったり、相続人を探すのに手間がかかったりすると期間が延びるため、費用も膨らみます。

 

申立て費

家庭裁判所への申立てに必要な経費は下記の通りです。

  • 収入印紙800円分
  • 連絡用の郵便切手代(各裁判所によって異なります)
  • 官報への公告料5,075円

このほか戸籍謄本が必要になる場合は、別途取得費がかかります。

官報とは、国が発行している広報紙のようなもので、法令に関する情報など広く国民に知らせる必要がある情報を掲載し、毎日発行しています。

民法では、相続財産管理人が選任されたことを公告することが定められているため、公告料が必要になります。

 

遺産よりも費用が多い場合はどうなるのか

遺産よりも相続財産管理人へ支払う費用やその他の経費が多くなった場合は、その費用を申立人が負担しなければなりません。

どのような場合にいくら必要になるのか説明します。

 

予納金が必要

裁判所が、遺産よりも相続財産管理人への報酬や経費が多くなると判断した際は、申立人が予納金として数十万円~100万円ほどを裁判所に納めます。

遺産が多くても不動産や株式ばかりで現金が少ないと、予納金を最初に支払わなければなりません。清算終了後に予納金の余りがあれば返還されます。

予納金の額は申立て後に決定するので、申立て前にはわかりません。決定した予納金が想定以上に高額なときには、申立ての取り下げができるのでご安心ください。

ただし、申立てに関する手続きを専門家に代行してもらった場合の費用はかかります。

 

相続財産管理人が行う手続き

相続財産管理人が選任された後に行われる手続きについて、具体的に説明します。令和5年4月1日に民法が改正されているため、ここで説明するのは改正後の手続きです。

 

相続人捜索の公告

家庭裁判所は、相続財産管理人(現、相続財産の清算人)が選任されたことを知らせるためと、相続人がいないか捜索するための公告を6か月以上の期間を決めて行います。

この公告の期間が満了するまでに相続人の申し出がなかったときには、相続人がいないことが確定します。

 

債権申立ての公告

家庭裁判所が相続人捜索の公告を行うのと並行して、相続財産管理人は被相続人に対する債権者がいないか、相続の受遺者がいないか公告を行います。

公告の期間は2か月以上で、相続人捜索の公告の期間が満了するまでの間に行われます。

 

債権者への清算や財産分与

相続人の不存在が確定したら、相続財産管理人は債権の支払いなどを行います。その際、相続財産管理人は必要に応じ裁判所の許可を得て、不動産や株式を売却し現金に換えられます。

相続財産管理人が必要な支払いや財産分与を行い、残った相続財産を国庫に引き継ぎ手続きは終了です。

 

法改正で手続きの時間短縮に

民法の改正により、相続財産管理人の選任から清算手続きまでの期間が大幅に短縮されました。

以前は、選任の公告(2か月)→債権申立ての公告(2か月以上)→相続人捜索の公告(6か月以上)と順番に行うと定められていたため、清算手続きを行えるまで最低10か月かかりました。

法改正後は、選任の公告と相続人捜索の公告を1つにまとめ、その期間内(6か月以上)に債権申立ての公告(2か月以上)を並行して行えます。つまり、最短6か月の公告で清算手続きに移れるということです。

また、相続放棄を行った相続人の相続財産の管理義務についても、明確になっています。

相続人は、相続放棄を行っても相続財産の管理義務があることが民法に定められています。改正前は、いつからどの範囲までの管理義務を負うのかが不明確で、相続人に大きな負担となっていました。

改正後は、放棄の時点現に占有している相続財産を、他の相続人や相続財産管理人に引き渡すまでの間、保存義務が生じると明記されています。

例えば、放棄の時点で相続財産である不動産に居住している場合には、他の相続人や相続財産管理人に引き渡すまで、保存に必要な管理を行わなければなりません。つまり、相続人は相続財産管理人が選任されない限り、相続財産の管理を継続しなければならないということです。

 

相続財産を受け取れる人

相続人がいない被相続人の財産を受け取れるのは、被相続人に対する債権者と特定の財産を遺贈された人、内縁の配偶者などの特別縁故者です。

  • 債権者
  • 特定財産の遺贈を受けた人
  • 特別縁故者

 

それぞれについて説明していきます。

 

債権者と特定受遺者

被相続人の債権者と特定受遺者は、債権申出の公告期限内に申し出を行うことで支払いを受けられます。

特定受遺者とは、被相続人の遺言などによって特定の財産を贈与された人です。遺贈される財産は特定されていなければなりません。

 

特別縁故者

特別縁故者は、相続人以外で被相続人と特別に親しくしていた人のことです。特別縁故者は、相続人がいない場合にのみ遺産を受け取れます。

特別縁故者と認められるには、下記の要件のいずれかを満たすことが必要です。

  • 被相続人と生計を同じくしていた人
  • 被相続人の療養看護に努めた人
  • 上記の人と同等以上の関係があった人

 

代表的な例では、内縁の配偶者があります。内縁の配偶者は相続人でないため、遺言による遺贈などがない限り遺産を受け取れません。しかし、被相続人の実質配偶者として生計を同じくしてきたことから、特別縁故者と認められ財産分与を受けられます。

 

特定受遺者も特別縁故者も遺産を受け取ると相続税がかかる

特定受遺者や特別縁故者として遺産を受け取った人も、相続税の申告が必要です。

相続税は基礎控除分を除いた相続財産にかかります。相続税の基礎控除額は、3,000万円+(600万円×法定相続人の数)です。特別縁故者が遺産を受け取る場合、相続人はいないので、相続財産が3,000万円以上であれば相続税がかかります。

特定受遺者の場合、受け取った遺産だけに相続税がかかるわけではないのでご注意ください。他の遺産と合わせて税額を計算する必要があります。

また、配偶者と1親等内の血族以外の人の相続税は2割加算されます。これは特定受遺者や特別縁故者にも当てはまりますので、相続税額を間違わないようにしましょう。

 

最後に

相続財産管理人は、相続人がいない場合に家庭裁判所が申立てに基づいて選任します。被相続人の債権者などの利害関係人と、検察官が申立人となれます。

令和5年4月1日に法改正が施行され、名称が「相続財産の清算人」に変更されました。

相続財産管理人の報酬やその他の経費は相続財産から支払われますが、相続財産が少ない場合には申立人が予納金として、まとまったお金を裁判所に納めることになります。

申立ての手続きに不安がある方は、弁護士や司法書士などに相談するのがいいでしょう。特定受遺者や特別縁故者であれば、遺産を受け取ったあとに相続税の申告も必要です。相続税の申告は相続税に強い税理士にご相談ください。

 

 


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