更新日:2023.07.05
前の記事では、遺言書の種類とメリット・デメリットについて紹介をしました。
遺言書の普通の方式には「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」の3つがあり、それぞれのメリットとデメリットを紹介しました。
この記事では、自身で作成をする「自筆証書遺言」について、その書き方や新たに制度化された保管制度について紹介します。
自筆遺言書とは、ご自身で全ての手続きを行うことができる、最も手軽な遺言作成の方法です。
手軽に作成できるというメリットがある一方で、形式が厳格であったり、紛失・破損のリスクがあったりといったデメリットもあります。
作成費用がかからず、もっとも手軽に作成できるのが、自筆証書遺言です。
ここでは、自筆証書遺言の様式と内容、必要な添付書類について説明します。
決まった様式はありません。
ただし、全文、日付、氏名は自署でなければなりません。
また押印も必要です。印鑑は認印でも構いません。
日付は「〇年〇月〇日」まではっきり書きます。
「〇年吉日」という書き方は無効です。
パソコンや代筆で作成した遺言書も無効となりますので、必ず遺言者の自筆で書いてください。
訂正をする場合は、定められた方式に従って行わなければなりません。
訂正したい箇所に二重線を引き、その上に押印します。
二重線をした近くに正しい文字を書きます。
さらに遺言書の末尾に「〇行目〇文字削除〇文字追加」と書き、署名します。
この方式が守られていない場合、訂正はなかったものとして扱われます。
内容はできるだけ詳しく、誰が見ても誤解が生じることのないように書かなければなりません。
相続人の氏名のほかにその人の生年月日を記すことも有効です。
財産目録を添付する際は「別紙目録第1記載の不動産」というように、どの財産かを明確に記載します。
目録を添付しない場合は、不動産であれば所在住所、面積など細かい情報も記載が必要です。
本文とは別に、財産の目録などを添付することができます。
添付書類は自署でなくてもよく、登記事項証明書や通帳のコピーも有効です。
通帳のコピーは遺産が特定されていればよく、金額の増減部分がなくても構いません。
添付書類にはすべてに署名押印が必要です。
表裏に記載がある場合はそのどちらにも署名押印しなければなりません。
自筆証書遺言を法務局へ預けられる制度が、令和2年7月10日から開始されました。
法務局に預けることにより、遺言書の紛失や利害関係人による隠匿といった危険を防止することができます。
法務局による遺言書の外形的なチェックも受けることができるため、書式不備で無効になる可能性も低くなります。
遺言者が希望すれば、相続開始後に特定の相続人に通知がいくようにすることも可能です。
裁判所による検認も不要なことから、非常に利便性の高い制度といえます。
遺言書の保管には1通あたり3,900円の手数料がかかり、原本の保存期間は遺言者の死亡後50年間(画像データの保存期間は遺言者死亡後150年間)とされています。
遺言書の保管申請は、下記のいずれかを管轄する法務局で行えます。
原本の閲覧や保管申請の撤回は、遺言書保管所で行わなければならないという点に注意が必要です。
その他の閲覧申請などは全国の法務局で行えます。
①遺言者の住所地
②遺言者の本籍地
③遺言者の所有する不動産の所在地
遺言書保管制度を利用するためには、決められた様式で遺言書を作成しなければなりません。
下記の様式以外の書き方は自筆証書遺言と同じです。
用紙:A4サイズで文字に重なるような模様がないもの(一般的な罫線は可)
余白:上部5ミリメートル,下部10ミリメートル,左20ミリメートル,右5ミリメートルの余白を最低限つけること
記載面:片面のみ
ページ番号:各ページに記載(余白内に記載)
複数枚の場合:ホチキスなどで綴じず、バラバラの状態にする(スキャナーで読み込むため)
筆記具:ボールペンや万年筆を使用する(長期間保存するため、消えるインクなどは使用不可)
遺言書には「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」の3つの種類があります。
それぞれにメリットとデメリットがありますが、もっとも気軽に作成できるのは「自筆証書遺言」です。
自筆証書遺言は書式の間違いにより無効になったり、保管時に紛失したりする危険があります。
しかし、令和2年7月から開始された「自筆証書遺言書保管制度」を利用することで、リスクを抑えられるようになりました。
公正証書遺言に比べてかかる費用も低いですので、まずは自筆証書遺言から検討するのもいいかもしれません。
遺言書の作成には相続税の知識や法律の知識も必要ですので、ご不明点があれば税理士や弁護士といった専門家にご相談することをおすすめします。
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