更新日:2023.06.28
「遺言書」とは、遺贈や相続分の指定について故人の意思を記した書類です。
「ゆいごんしょ」や「いごんしょ」と言われます。ど
ちらの読み方でも間違いではないですが、一般的に法的効力をもつ遺言書は「いごんしょ」と呼ばれます。
一方「ゆいごん」は、故人が死後のために残したメッセージといった意味合いがあり、法的効力がない家族への手紙などに使われます。
この記事では、法的効力のある「いごんしょ」について説明していきます。
Contents
法的効力のある遺言書は、書式や方式について民法で定められています。
決められた通りに作成しなかった場合、無効となることもあります。
せっかく遺言書を作成しても無効となっては意味がありません。
故人の意思が死後においても守られるよう、法律に従った方法で作成しましょう。
民法では、遺言書の種類を「普通の方式」と「特別の方式」の2つに分けています。
一般的に使われるのは「普通の方式」であるため、今回は「普通の方式」について説明します。
普通の方式には「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」の3つがあります。
それぞれの特徴やメリットデメリットについてみていきます。
自筆証書遺言とは、遺言者(相続される人)が全文、日付、氏名を自署し、押印して作成します。押印は認印でも可能です。
平成31年1月13日に改正法が施行され、財産目録についてはパソコンなどを使用して作成してもよいとされました。
財産目録とは、財産の内容を一覧にまとめたものです。
以前はこの目録も自署で書かなくてはならず大変なことでしたので、法改正で大幅に手間が軽減されたといえます。
ただし、財産目録の各ページに遺言者が署名押印をする必要があります。
自筆証書遺言に保存期間や有効期間の定めはありません。
民法では「遺言者が死亡したときから効力を生じる」と規定されているだけです。
極端な例では、遺言者が亡くなって20年後に発見された遺言書も有効となります。
遺言書は有効でも、20年も経過したあとでは回復できない事態もありえます。
複数の自筆証書遺言が発見されたときは、内容が矛盾する項目は新しい日付の遺言書が優先されます。
一方、内容が全て異なる遺言書が発見された場合は、全ての遺言書が有効です。
・費用がかからない
・手軽に作成できる
自筆証書遺言は紙とペンと印鑑があれば作成できるため、費用がかかりません。
また、手軽に作成できる点もメリットといえます。
・無効となりやすい
・紛失しやすい
・発見されないことがある
・破棄や隠匿のリスクがある
・裁判所による「検認」が必要
欠点としては、間違いが起きやすく無効になることが多いということです。
自宅で保管した場合、紛失したり、発見されなかったりすることもあります。
最も恐ろしいのは、利害関係人によって破棄や隠匿されるという危険性です。
自筆証書遺言は、勝手に開封することはできません。
相続開始後、遺言書を預かっていた人や発見した人は、家庭裁判所へ「検認」の請求を行わなければいけません。
「検認」とは、相続人に遺言書の存在を通知すると同時に、偽造や変造を防止することを目的とした手続きです。
家庭裁判所での手続きが必要になるため、相続人に負担がある点ではデメリットといえるでしょう。
自筆証書遺言の上記デメリットを解消する方法として、令和2年7月10日から始まった「自筆証書遺言書保管制度」というものがあります。
この制度については後の章で説明します。
公正証書遺言は、証人2名の立ち合いのもと公証人に作成してもらう遺言書です。
通常は公証役場で行われます。
公証人とは、弁護士、裁判官、検察官、法務局長や司法書士などの長年法律の専門家として従事してきた人の中から、法務大臣が任命した人です。
公証人は通常、公証役場というところで執務を行います。
公正証書遺言の作成方法は、公証役場にて公証人に遺言内容を話し、公証人がその内容を文書にまとめるというものです。
作成には証人2名が立ち合いますが、次の人は証人になれません。
・未成年者
・相続人になると思われる人、受遺者やこれらの配偶者または直系血族
・公証人の配偶者、4親等内の親族、書記、使用人
証人の役割は、次の3つです。
・遺言者本人であることの確認
・遺言者が正常な能力をもち、自らの意思で遺言書を作成していることの確認
・遺言書の内容が、遺言者の意思を正しく反映しているかの確認
身近な人で証人をお願いできる人がいない場合は、公証役場で有料にて紹介を受けることもできます。
もちろん、弁護士や司法書士、税理士が証人となることも可能です。
・無効になりにくい
・遺言書の内容が他に漏れる心配がない
・公証役場が保管するので、紛失や隠匿などの危険性がない
・裁判所の検認が不要
公正証書遺言は法律の専門家が作成するため、法的な間違いによって無効となることはありません。
ましてや、自筆証書遺言のように形式間違いで無効となることもありません。公証人や書記には守秘義務があるため、遺言書の内容の秘密は固く守られます。
遺言書は公証役場にて保管されるので、紛失や隠匿といった危険もありません。
公正証書の保存期間は公証人法施行規則で20年と定められていますが、その期間を過ぎても遺言者が亡くなるまで保管されます。
死後の手続きについては、自筆証書遺言のような裁判所の検認は不要です。
もし公正証書役場に赴けない場合は、公証人に出張してもらうことも可能です。その際は別途費用がかかります。
・費用がかかる
・完成までに時間がかかる
デメリットとしては、費用がかかることです。
公正証書遺言の作成手数料は、対象となる財産価額によって変わります。
下記の手数料表をご参照ください。財産の相続または遺贈を受ける人ごとにその財産を計算し、下記の表に当てはめて手数料を求めます。
その手数料を合算したものが公正証書遺言作成の全体の手数料ということです。
財産の総額で手数料を求めるわけではないので、ご注意ください。
全体の財産が1億円以下の場合は、求めた手数料に11,000円が加算(遺言加算)されます。
日本公証人連合会HP より
公証人が遺言者の指定する場所に出張する場合には、上記手数料が50%加算されます。
さらに、公証人の日当と交通費が必要です。
秘密証書遺言は、遺言書の存在を公証人によって証明してもらうというものです。
具体的には、遺言者が作成した遺言書を封をした状態で公証役場へ持っていき、公証人と2名の証人によって認証の手続きをしてもらいます。
手続きが終わったあとは、遺言書を自身で保管します。
自筆証書遺言と異なり、文面は自署でなくてよいとされています。
ただし、署名と押印は必要です。
遺言書を入れた封筒にも、遺言書で使用したのと同じ印で押印しなければいけません。
秘密証書遺言も他の遺言書と同じく、時効によって無効になることはありません。
・遺言書の内容を誰にも知られない
・遺言者の判断能力の有無について争われることはない
・書くことができなくても代筆などで作成できる
秘密証書遺言のメリットは、誰にも内容を知られることがないということです。
公証人や証人も遺言書を開封することはありませんので、遺言者以外内容を知ることはできません。
自筆証書遺言では、遺言者の判断能力の有無について争われることがありますが、秘密証書遺言では公証人と証人によって確認されるため、判断能力の有無で争われることはありません。
また、本文を自署ではなくワープロや代筆でも作成できるということもメリットの一つと言えます。
・費用がかかる
・証人が必要
・内容の適否により無効となる可能性がある
・遺言者自身が保管するので、紛失の危険がある
・家庭裁判所の検認が必要
秘密証書遺言はその存在について認証を受けるのみなので、内容の適否は確認されません。
つまり、書式の間違いによって無効となることもあり得ます。
保管も自身で行うので、紛失や隠匿といった危険もあります。
公証人に対する費用も生じますし、証人を用意する手間もかかります。
また、自筆証書遺言同様、開封には家庭裁判所に検認の請求を行わなければなりません。
この記事では、遺言書の種類とメリット・デメリットを紹介しました。
次の記事では自筆の遺言書について紹介します。
次の記事も是非ご覧ください。
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