更新日:2023.06.21
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相続税対策において、名義預金は有効な手段なのでしょうか?
税務署が名義預金と判断する基準や、名義預金と疑われないための対策について解説します。
相続における名義預金とは、被相続人(亡くなった人)の名義ではないが、被相続人の財産とみなされる預金です。
例えば、亡くなった親が子ども名義の預金口座を管理していたような場合があります。
親権者であれば、子どもが0歳であっても子どもの預金口座を開設できます。
金融機関によっては配偶者や家族の代理による新規口座開設も可能です。
名義預金は相続税の対象となるため、相続税の生前対策には活用できません。
税法上、名義人と実際に管理している人が異なる預金口座は、実際に管理している人の資産とみなされます。
よって管理人が亡くなった場合には、相続税の対象として財産に含んで税金の計算を行わなければなりません。
もし名義預金が課税の対象にならないとすると、税金逃れのために名義預金の悪用が横行してしまいます。
税の公平性を保つためにも、税務上は実際の口座管理人を資産の保有者とみなしているのです。
被相続人名義でない預金口座全てが、名義預金とみなされるわけではありません。
税務署は下記の項目を総合的に考慮して、名義預金であるか否かを判断しています。
預金口座の財産が誰から供給されたものかということです。
預金が被相続人の財産からなされていた場合には、実態は被相続人の財産であるということになります。
例えば、専業主婦である妻名義の口座に数千万円の預金があった場合、実際は夫の財産から預金が行われており、妻名義の口座は夫の預金とみなされたという事例があります。
預金が贈与されている場合は、名義人の財産となります。
しかし、下記のような状況では贈与されているとは考えにくく、名義預金とみなされる可能性があります。
被相続人が通帳や印鑑、キャッシュカードを管理していた場合、名義預金を疑われます。
贈与された資産であれば、口座の名義人が自身で通帳や印鑑、キャッシュカードを管理し、自由にお金を引き出せる状態にしておくのが自然です。
そのため、被相続人が口座管理をしていたとなると、名義人に贈与されていないと考えられるのです。
預金の利息や株式の配当など資産から得られる利益を、被相続人が受け取って使用していた場合には名義預金と判断されます。
被相続人名義でない預金口座をなぜ税務署が把握できるのかというと、理由は主に2つあります。
どうやって税務署が調査しているのか、説明していきます。
相続税の税務調査では被相続人の財産だけが調査されると思いがちですが、税務署は相続人や親族の財産も調査します。
税務署は被相続人の過去の収入も把握しているため、収入から推測する財産よりも相続税の申告額が大幅に低いと疑いの目を向けられます。
被相続人の財産が少ないということは、相続人や親族に移っている可能性があるのでより詳しい調査が入ります。
税務署の職員には、質問検査権というものが法令で認められています。
納税者への聞き取りでは把握できない、重要な情報を収集するためです。
税務署はこの権限に基づき、金融機関に取引照会を行い銀行や証券会社の取り引き内容を過去5~10年分調査できます。
税務調査で名義預金が指摘されると、過少申告加算税や重加算税といったペナルティーが課されます。
税務調査が行われる前に、名義預金に気が付いたときにはできるだけ早めに修正申告を行いましょう。
被相続人の財産に名義預金があった場合、どのように取り扱うのか説明していきます。
名義預金は被相続人の財産であるため、遺産分割の対象となります。
預金の名義人が相続人となる場合には、特別な手続きは不要でそのまま預金口座を取得します。
名義人と別の人物が相続すると、被相続人の預金口座を相続するよりも手続きが煩雑になり時間もかかります。
納税資金に使う場合には注意が必要です。
名義預金に時効(除斥期間)はありません。
贈与税では、贈与を受けた翌年の贈与税申告期限翌日から6年(悪質な場合は7年)を経過すると時効となります。
名義預金は贈与されていないため、贈与税の時効は適用されません。よって、名義預金には時効はないということになります。
名義預金を解消するため本人名義の口座に預金を移動した場合、贈与税がかかるのではと心配する方もいらっしゃいます。
本人名義の口座への資金移動には贈与税はかかりません。
名義預金は始めから預金管理者である本人の財産であるからです。名義人へ正式に贈与を行った場合は、年110万円を超えた部分に贈与税が課されます。
相続税対策として生前贈与を行ってきたのに、名義預金とみなされてしまってはもったいないことです。名義預金とみなされないための対策について説明します。
贈与について証明するには、贈与契約書の作成が効果的です。夫婦や親族間でも1年に1回贈与契約書を結んでおきましょう。
ただし、過去の日付に遡って契約書を作成することは文書偽装行為です。税務署が違法行為を発見すると、重いペナルティーの対象にもなります。
過去の贈与については、覚書を作成することをおすすめします。
覚書は、過去に行った資金移動が贈与であることを確認する書面です。
日付は署名を行った日で記載するため、過去の契約書を装うような違法にはなりません。
残念ながら覚書によって税務調査で贈与が認められるとは限りませんが、相続時のトラブル防止につながります。
契約書も覚書もなく生前贈与であることを証明できないと、被相続人からの預り金ということになり、遺産分割の対象となってしまいます。
贈与税の申告によって贈与を受けたことの証明とする方法もあります。
ただし、贈与税は年110万円の基礎控除があり、110万円以下の贈与については申告義務がありません。
贈与税の申告を証拠として活用するのであれば、110万円を超える贈与が必要です。
現金での贈与は資金の移動が見えないため、疑いをもたれます。
贈与を行う際には資金の流れが把握し易い銀行振り込みを利用しましょう。
通帳や印鑑、キャッシュカードの管理は名義人が行いましょう。
名義人が自由に預金を利用できる環境にあることで、口座の存在を知っていることがわかり、名義預金である疑いを回避できます。
名義預金は被相続人の財産とみなされ、相続税の対象となります。
相続税対策のためにコツコツと名義預金を行ってきても、多くは税務調査によって指摘を受けることになります。
有効な相続税対策には専門の知識が必要です。
重いペナルティーを課されたり、トラブルになったりする前に相続税に詳しい専門家にご相談ください。
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