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デジタル遺産は相続できる?遺産となるものや生前対策について解説

更新日:2024.12.02

はじめに

デジタル化が進んだ現代において、デジタル遺産の相続は非常に重要な事柄です。

デジタル遺産には明確な定義がありませんが、経済的価値のある財産は相続税の対象となります。デジタル遺産に気付かずに、遺産分割協議や相続税の申告を行うと、後から追徴課税などのペナルティを受ける恐れや、思わぬ負債を負う可能性も否定できません。デジタル遺産とは何か、相続税はどのように評価するのか、参考にしてください。

 

デジタル遺産とは

まずはデジタル遺産について説明します。デジタル遺産には明確な定義はありません。ここでは、この記事上で使う「デジタル遺産」の定義をお伝えします。以下で「デジタル遺産」と「デジタル遺品」の違い、デジタル遺産の具体例を見ていきましょう。

デジタル遺産とデジタル遺品の違い

「デジタル遺産」とは、「デジタル形式で保管されていた財産のことで、経済的価値のあるもの」と、この記事では定義します。一方、金銭に関わらない財産は「デジタル遺品」として区別します。「デジタル形式での保管」とは、デジタル機器やインターネット上に保存されている状態のことです。デジタル遺品の例としては、スマートフォンに保存された写真や動画、クラウド上にある連絡先やSNSなどの各種サービスのアカウント情報があります。

デジタル遺産の具体例

デジタル遺産の具体例では、ネット銀行やネット証券口座、仮想通貨などの金融資産が挙げられます。また、Suicaといった電子マネーの残高や航空会社のマイレージ、クレジットカードのポイント、音楽やイラストなどのデジタルの著作物、NFTアートとさまざまです。ポイントについては、発行会社の規約により相続できるものとできないものがあります。

 

デジタル遺産は相続できるか

デジタル遺産は経済的価値のあるものである限り、相続の対象となります。相続での手続きは基本的に通常の遺産と同じです。大まかな流れは下記の通りとなります。

1、遺言書の確認

2、相続人の確定

3、相続財産の調査及び確定

4、遺産分割協議

5、相続税の申告と納付

ここで重要なのは、相続財産の調査でデジタル遺産を見落とさないことです。もし、デジタル遺産に気付かずに遺産分割協議を行ってしまった場合は、またやり直しになります。さらに相続税の申告と納税をしていれば、正しい内容に修正し申告し直さなければなりません。また、FX取引といったデジタル遺産で損失がでていれば、その返済義務も相続人が負います。相続放棄を行おうとしても、期間が経過していたり、すでに遺産を処分していたりすると認められません。そうした事態にならないためにも、デジタル遺産も含めた相続財産の入念な調査が必要です。

 

デジタル遺産の調査方法

では、実際にデジタル遺産はどのようにして調査すればいいのでしょうか。以下2つの方法を紹介します。

クレジットの明細や預金口座の取引履歴を確認する

遺品の中にクレジットカードの利用明細や預金通帳があれば、それらの取引履歴からデジタル遺産を見つけられる可能性があります。通帳がなくても、キャッシュカードで口座がある銀行や口座番号がわかれば、銀行で取引明細を発行してもらい詳細を確認することも可能です。SuicaやPayPayといったキャッシュレス決済は、クレジットカードや銀行口座からチャージされていることが多いので、そうした取引がないか確認しましょう。証券口座を探すときは、証券保管振替機構に依頼し、有料で開設している口座を照会できます。これはネット証券口座などでも同様です。

スマホのアプリやメールから探す

スマホの画面ロックが解除できれば、アプリやメールから探せます。ネット銀行や証券口座はアプリで利用することが多いので、利用している金融機関がないか確認しましょう。アプリを開く際に電話番号を利用した二段階認証が必要な場合もあり、スマホを解約してしまうと開けなくなることに注意が必要です。スマホのロック解除番号がわからないときは、やみくもに何度も試すのはやめましょう。iPhoneの場合、数回間違えると端末が初期化されてしまいます。残念ながら、番号を知らない第三者が、データを残したままスマホのロックを解除する方法はありません。まずは故人のエンディングノートや日記、メモなどに番号が残されていないか探してください。

GmailはGoogleに開示請求ができる

故人が利用していたGmailアドレスがわかれば、Googleに開示請求が可能です。請求は、専用フォームに必要事項を入力して送信することで行えます。その際、請求人の身分証明書や故人の死亡診断書のスキャンデータが必要となりますので、事前に用意しておきましょう。

参照:Google「故人のアカウントに関するリクエストを送信する」

 

デジタル遺産の相続税評価方法

お伝えした通り、デジタル遺産も通常の遺産と同様に扱うため、相続税の申告が必要です。ではデジタル遺産はどのように相続税評価を行うのか次で説明します。

ビットコインなどの暗号資産の相続税評価方法

暗号資産については、「活発な市場が存在する暗号資産」か「活発な市場が存在しない暗号資産」で評価方法が異なります。「活発な市場」とは、仮想通貨の取引所や販売所で十分な数量の取引が行われていて、継続的に価格情報が開示されている市場です。こうした市場の暗号資産は、外貨の評価に準じて、相続が生じたときの取引価格によって評価します。他方、取引量や頻度が少ない市場の暗号資産は、その内容や性質、取引実態などから個別の評価が必要です。例えば、類似する売買の例に基づいた価額や、専門家による鑑定結果をもとにする方法があります。

NFTは資産価値があるかどうかで判断

NFTとは、「Non Fungible tokens(ノン・ファンジブル・トークン)」の略称で、代替性のない偽造不可能な証明書付きのデジタルデータをいいます。ブロックチェーンを利用しているという点では仮想通貨と同じですが、デジタルデータに唯一無二の証明書を付けられるのがNFTの特徴です。この世に1つしかないデータを作れるので、デジタルアートや動画、トレーディングカードなどに利用され、人気の作品は高値で取引されるなどしています。相続税においては、NFTの評価について法的な取り扱いが定まっていません。そのため、他の財産の評価方法を定める通達に準じて評価します。例えば、骨とう品に関する評価などです。具体的には、市場が存在する場合にはその市場価額に基づき、市場がない場合には類似品の売買実例を参考にするか、専門家の鑑定に基づくことになります。いずれにしても、一般の方が対応するのは難しいため、専門家に相談するのがいいでしょう。

 

デジタル遺産相続に備えて生前に行える対策

ここまでの内容で、デジタル遺産相続の大変さがお分かりになったと思います。では、スムーズにデジタル遺産を相続するにはどうしたらいいのか、生前対策について見ていきましょう。

デジタル遺産のリストをつくる

どういったデジタル遺産をもっているのか、リストにまとめておきます。デジタル遺産だけでなく、その他の資産も合わせて書いておくといいでしょう。自分でも忘れている資産があるかも知れません。資産の把握のためにも一度整理してみることをおすすめします。

エンディングノートを作成し家族に伝えておく

エンディングノートを作成しておくのもいいでしょう。エンディングノートとは、万が一のときのために自分が希望する医療や介護、葬儀、相続について記しておくものです。このノートにデジタル遺産の種類やIDパスワードをメモし、大切な人に伝えておくことで、死後の手続きがスムーズに行えます。エンディングノートについては別記事「無料で作れるエンディングノートとは?遺言書との違いや記載内容を紹介」もご参照ください。

iPhoneの設定を利用しておく

iPhoneユーザーであれば、事前に設定しておくことで、亡くなったあとに特定の人が故人のAppleアカウントにアクセスできるようになります。iOS 15.2以降のバージョンにアップデートされていれば利用可能です。具体的には、次の手順で設定します。

1,「設定」を開く

2,一番上のアカウント名をタップ

3,「サインインとセキュリティ」をタップ

4,「故人アカウント管理連絡先」をタップ

5,「故人アカウント管理連絡先を追加」をタップ

6,注意書きと説明が表示されるので、それらを読んで「故人アカウント管理連絡先を追加」をタップ

7,アドレス帳から共有する人のメールアドレスを選択

8,アクセスキーの付与を承諾

9,故人アカウント管理者とアクセスキーを共有することを承諾

10,アクセスキーを印刷して保管するか、故人アカウント管理者にメールで共有するか選択

11,メールを選択した場合、故人アカウント管理者にメールが通知される

設定が完了すると、iPhoneの「故人アカウント管理連絡先」に追加した人の情報とアクセスキーが表示されます。故人アカウント管理者は故人の連絡先やメモにはアクセスできますが、iCloudキーチェーンにはアクセスできません。iCloudキーチェーンとは、Webサイトやサービスのログイン情報を記録しておく機能です。故人アカウント管理連絡先の設定をしても、iCloudキーチェーンに保管したデジタル遺産にアクセスするIDやPWは伝えられないため、どこかにメモを残しておく必要があります。

参照:「亡くなったご家族の Apple アカウントへのアクセスを申請する方法」

 

さいごに

デジタル遺産の相続について説明しました。デジタル遺産も通常の遺産同様、経済的価値があるものは相続の対象となります。ネット銀行や電子マネーなどの利用がないかしっかり調査しましょう。しかし、何も知らされていなかった相続人が、デジタル遺産を見つけるのは大変なことです。将来、ご自身の家族が大変な思いをしないためにも、デジタル遺産のリストを作ったり、エンディングノートを書いたりして、デジタル遺産についての情報がわかるようにしておきましょう。

 

 

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