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遺産分割の手続きの流れとは?

更新日:2024.05.23

相続が発生すると、遺産分割を行わなければなりません。

一口に遺産分割といっても、具体的にどのような流れでどう進めるべきか、必要なことは何かわからないことが多いと思います。

この記事では、相続専門の税理士が遺産分割手続きの流れや、遺産分割協議について説明いたします。

遺産分割の概要を知り、進め方などをイメージしてみてください。

 

遺産分割の手続きの流れ

遺産分割の手続きの流れは概ね下記の通りです。

1  遺言書があるか否かを確認

2  相続人の確定

3  相続財産の調査

4  遺産分割協議の実施

5  遺産分割協議書の作成

1~3は平行して確認を進めることもあり、必ずしもこの順番通りとは限りません。

相続人については、別記事の「相続人について」をご参照ください。

遺言書が亡くなった方(被相続人)の住居などから見つかった場合には、開封してはいけません。開封する際には家庭裁判所による検認の手続きが必要です。

ただし、公正証書遺言や法務局で保管されている遺言書は検認が不要です。

検認を受けずに遺言書を開封すると、罰金が科されることもあります。また、遺言書を隠したり、改ざんしたりした場合は相続人の地位が失われ相続できなくなるため、絶対に行ってはいけません。

裁判所に検認を申立てし、手続きが行われると検認済証明書が発行されます。この証明書は不動産の名義変更時や預金の引き出しの際に必要になるので、必ず申請して受け取りましょう。

 

遺産分割協議とは

遺産分割協議とは、遺言書がない場合に相続人同士で誰がどの割合で相続するかを決める話し合いのことです。

遺産分割協議は相続人全員の合意が必要です。

相続人が遠方にいて話し合いに参加できないときには、後日話し合いの内容を説明し合意してもらうことでも成立します。

遺産分割協議には法的な期限はありませんが、相続税の申告納税は相続があったことを知った日の翌日から10か月以内に行わなければなりません。

遺産分割協議が申告期限までに合意できない場合には、法定相続分で仮の分割を行い期限内に申告納税を行います。

相続税の申告期限を過ぎると、ペナルティが科されるだけでなく、適用を受けられるはずの特例や減税措置が無効となるため相続税額が高くなってしまいます。そのため、期限内に一旦法定相続分での申告と納税が必要となります。

遺産分割協議が正式にまとまった後に、修正申告などを行うことで精算が可能です。

また、2023年4月1日から特別受益※1や寄与分※2の請求に対して10年の時効が定められました。これにより、遺産分割協議が10年を超えると特別受益や寄与分の請求は行えません。

遺産分割協議が長引けば長引くほどトラブルや手続きが増えるため、可能な限り相続税の申告期限までに成立させるのが得策です。

※1特別受益:被相続人から生前に受けた贈与などの特別な利益。他の相続人は特別受益を受けた相続人に対して、特別受益分を考慮した財産分与を主張できる。

※2寄与分:被相続人の生前に無償で療養看護などを行い、被相続人の財産維持や増加に貢献した相続人がその寄与料を請求できる権利。

 

遺産分割の4つの方法

遺産分割の方法には主に以下4つの方法があります。

  • 現物分割
  • 代償分割
  • 換価分割
  • 共有分割

それぞれについて説明します。

現物分割

現物分割とは、遺産をそのままの状態で分ける方法です。

例えば、家は長男に車は長女にという分け方になります。

現物分割では遺産によって価格差が生じるため、取得額が少ない相続人へ取得額が大きい相続人から現金で補填するといったことが行われます。

代償分割

代償分割とは、特定の相続人が遺産を現物で取得する代わりに、他の相続人に対して金銭などで調整する分割方法です。

例えば、被相続人が事業を行っていた不動産を長男が相続し、他の相続人の相続分を長男が現金で調整するなどです。

現物を取得した相続人の相続税は、他の相続人に代償した額を相続財産から差し引いて計算を行います。

注意が必要なのは、代償を不動産で行う場合です。他の相続人への代償として自己が保有する不動産を譲渡すると、所得税がかかります。

現金以外で代償を行う場合には、税理士への相談をおすすめします。

換価分割

換価分割とは、相続財産を売却し金銭で分割する方法です。物理的に分けることが難しい、不動産や株式を分割する際に行われます。

金銭に換えて分割するので分けやすいというメリットがある反面、売却のための費用や譲渡所得税がかかる点がデメリットです。売却による利益は相続人の所得となるため、譲渡所得税がかかります。

譲渡所得税は、換価分割で遺産を受け取る相続人それぞれが申告と納税を行わなければなりません。

不動産売却時に便宜上1人の相続人名義に変更し、その後代金をその相続人から他の相続人に渡した場合、贈与税がかかるのではと心配される方もいらっしゃいますが、遺産分割協議書にその旨記載があれば贈与税は非課税です。

換価時に分割割合が決まってなく、所得税の申告期限に間に合わないときには法定相続分で申告納税を行います。ただし、その後に分割割合が確定したとしても、譲渡所得税については修正申告や更正の請求は認められませんのでご注意ください。

譲渡所得税の負担調整は相続人間でのみ行うことになります。

共有分割

共有分割とは、複数の相続人で遺産を共有する方法です。

例えば、被相続人の住居を子ども2人で各1/2ずつ所有します。

遺産の形は変えずに権利を分割するだけなので、非常に分割しやすい方法です。

しかし、共有分割のまま所有し続けた場合、共有者が亡くなるとその相続人が共有持ち分を分割して複数人で相続するなど、時が経つにつれ権利関係が複雑化します。

共有物件を管理したり処分したりする際には、共有者全員の同意が必要なこともあり、トラブルになりやすいというのが共有分割のデメリットです。

 

遺産分割協議書の書き方

遺産分割協議がまとまったら、合意した内容を記した遺産分割協議書を作成します。

遺産分割協議書の書式には決まりがなく、作成方法も手書きでもパソコンでもどちらでも構いません。

重要なのは誰がどの遺産をどの割合で取得するのかが正確に記載されていることと、相続人全員が合意していることが分かることです。

遺産分割協議書の作成は法的には定められていませんが、相続税の申告、不動産の登記、銀行や証券会社での手続きなど、提出を求められる場面が多くあるため作成は必須といえます。

他方、遺言書がありその通りに遺産分割を行う場合には、遺産分割協議書は不要です。

では、実際に遺産分割協議書にどのように記載するのか、土地を相続した場合を例に説明します。

土地を相続した場合の例

遺産分割協議書に記載すべき事項は下記の項目です。

  • 被相続人(亡くなった方)の情報(氏名・住所・死亡した日)
  • 前書き
  • 相続人ごとの取得財産
  • 遺産分割協議後に見つかった遺産の分割方法
  • 日付
  • 相続人全員の署名押印

不動産を取得する場合は、その不動産の所在地、種類(地目)、取得面積を記載します。共有の場合は持ち分割合も明記しましょう。

遺産分割協議書作成後に見つかった遺産の取り扱いについては、あらかじめ包括的な文言を入れておくことで再作成を行う手間が省けます。

例えば、「本遺産分割協議後に判明した遺産は、相続人〇〇が相続する」といった文言です。

例文のように特定の相続人に帰属させるのではなく「各相続人が法定相続分に沿って取得する」や「別途協議する」といった内容でも構いません。

 

遺産分割協議がまとまらないときの対処法

相続人間で遺産分割協議がまとまらないときは、家庭裁判所による調停や審判という方法があります。

どういった手続きになるか、説明します。

家庭裁判所へ調停を申し立てる

相続人同士で遺産分割協議の合意ができない場合、家庭裁判所へ調停の申立てを行います。

調停は裁判とは異なり、あくまでも双方の話し合いでの解決を目指します。そのため、必要な資料の提出や遺産の再評価を求められることもあります。

調停でもまとまらない場合は審判となる

審判とは、裁判官が当事者から提出された資料や家庭裁判所調査官が行った調査をもとに判断し、決定を行うものです。

当事者同士の話し合いで解決を目指す調停とは、全く性質が異なります。

審判が確定したにもかかわらず応じない場合には、地方裁判所で強制執行の手続きを行うこともできます。

 

さいごに

遺産分割の手続きや流れについて説明しました。

遺産分割協議自体には期限はありませんが、できるだけ相続税申告期限内に合意することをおすすめします。

分割の方法によっては、相続税以外の税金が発生することもありますので、疑問や不安に思うことがございましたら相続につよい税理士にご相談ください。

 

 

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