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認知症の親が相続人になったらどうする? 手続きの注意点とは?

更新日:2024.08.02

はじめに

もし、両親のうちどちらかが先に亡くなり、残された親が認知症だった場合、相続の手続きはどうなるのでしょうか。子が認知症の親を代理することはできるのか、認知症であっても相続の手続きには影響しない方法はあるのか、この記事で解説します。

すでに相続が生じている方も、近い将来のために備えておきたいという方も、この記事を読んで認知症の相続人がいる場合の手続きについて把握してください。

 

相続人が認知症だとどうなるのか

例えば、父が亡くなり、認知症の母が相続人になったという場合、下記のような問題が起こります。

〇遺産分割協議ができない

〇相続放棄ができない

具体的にどういった問題かみていきましょう。

遺産分割協議ができない

相続財産の分割は、相続人全員による遺産分割協議によって、内容を決めなければなりません。

このとき、相続人のなかに認知症の人がいると、正常な意思決定が行えないため協議は不成立となります。勝手にほかの相続人が代筆などを行っても無効となると同時に、私文書偽造の罪に問われますので、絶対に行ってはいけません。

相続放棄ができない

相続放棄は法律行為であるため、認知症の方の申立ては認められません。

つまり、認知症の方は1人で相続放棄の手続きが行えなくなるということです。相続放棄は代理申請も可能ですが、本人が認知症の場合には代理申請も受理されません。

 

遺産分割協議ができないことの弊害とは?

ここでは、遺産分割協議ができないことの具体的な弊害について説明します。主に問題となるのは次の3つの事項です。

〇法定相続分で分けても不動産は売却できない

〇相続した預金の引き出しができない

〇相続税の特例が受けられない

それぞれについて詳しくみていきましょう。

法定相続分で分けても不動産は売却できない

遺産分割協議を行わず、法定相続分で遺産を分けた場合、不動産は共有状態となります。共有されている財産は共有者全員の合意がない限り、処分したり運用したりできません。法定相続分での相続登記は、遺産分割協議書がなくても相続人1人で行うことができるため、相続人に認知症の方がいても問題ないように思えます。しかし、その後に納税資金をつくるために不動産を売却したいと思ったときや、収益を得るために賃貸したいと思ったときには、認知症の方の同意が認められずできなくなってしまうのです。

相続した預金の引き出しができない

相続財産に預金がある場合、各相続人は自身の相続分の引き出しが行えます。しかし、銀行側はその人の相続分がいくらなのかわかりません。そこで提出が求められるのが遺産分割協議書です。法定相続分で分けた場合も提出が必要となるため、相続人のなかに認知症の方がいるケースでは預金の引き出しはできなくなります。

ただし、「預貯金の仮払い制度」を利用すれば、次のいずれか低い方の金額までは相続人のうちの1人の請求でも引き出しが可能です。

1.死亡時点での預貯金残高×法定相続分(相続人の取り分)×3分の1

2.金150万円

この「預貯金の仮払い制度」は、葬儀などに必要な費用を引き出せるようにすることを目的として制定されました。金融機関ごとに上記の上限が適用されるため、預金口座が複数ある場合には総額で150万円以上を引き出すことも可能でしょう。しかし、あくまでも緊急的に行われるもののため、この制度をほかの目的で利用するのは推奨できません。

相続税の特例が受けられない

相続税には、税負担を軽減するさまざまな特例が用意されています。それらの特例は遺産分割協議書の作成と提出が要件となっているものが多く、遺産分割協議が行えないと特例を受けられなくなるのです。

例えば、相続財産である実家の土地の評価を大幅に減らせる、小規模宅地等の特例は、遺言書の写しまたは遺産分割協議書の写しの提出が必要となります。遺産分割協議が行えないと、せっかく利用できる特例も使えないということです。

 

相続人が認知症の場合は成年後見制度の利用が必要

相続人に認知症の方がいる場合、その人に代わって法律行為を行う成年後見人が必要となります。以下で、成年後見制度についてと、制度利用時の注意点についてみていきましょう。

成年後見制度とは

成年後見制度とは、障がいや認知症などによって自分で判断することが困難な方を支える制度です。後見人は本人に代わって、財産管理や身上保護に関する法律行為が行えます。したがって、認知症の方が相続人となった場合には、後見人が遺産分割協議を行いますし、後見人が本人に代わって相続放棄を行うことも可能です。

成年後見制度は、申立てに基づき家庭裁判所が任命する法定後見制度と、将来に備えて本人が後見人を任命しておく任意後見制度の2つがあります。任意後見制度で子が後見人に指定されていて、被後見人と後見人の利益が相反する場合は、特別代理人の選任を家庭裁判所に申立てなければなりません。例えば、父の相続人に母と子がなり、母が認知症のため、子が母の後見人になっているようなケースです。母の遺産分割協議や相続放棄を後見人の子が行えるとすると、子は自分に有利なように手続きを行う恐れがあります。そのため、全く利害関係のない第三者の特別代理人が必要となるのです。

なお、後見監督人が選任されているときには、後見監督人が被後見人の代理となれるため、特別代理人の選任は必要ありません。

成年後見制度を利用する際の注意点

認知症の方が相続人になった場合、成年後見制度を利用することになりますが、事前に知っておくべきポイントが3つあります。

後見人が決まるまで数か月かかる

後見人が決まっていない場合、後見人が決定するまで1~3か月ほどかかると考えておく必要があります。相続税の申告期限は10か月ですので、後見人が必要となったら急いで手続きを行いましょう。

専門家が後見人となった場合費用がかかる

後見人は家庭裁判所が任命しますが、親族以外の弁護士や司法書士が選ばれることがほとんどです。こうした法律の専門家が後見人の場合、費用がかかります。報酬は管理する財産額によって変わりますが、月2~6万円を目安としておくといいでしょう。後見制度は被後見人が亡くなるまで原則として継続しますので、費用面についても留意しておく必要があります。

遺産の運用や処分がしづらくなる

後見人は、被後見人の利益を守ることが仕事のため、リスクのある運用や処分には消極的です。認知症の母に後見人がついているケースで、将来母が亡くなったときのことを考えて、子が母の資産で不動産の修繕を行おうと計画しても、後見人が被後見人の利益になると判断しなければ行えません。後見人はあくまでも被後見人の利益保護のために動きますので、家族からするとやりづらさを感じることもあるでしょう。

 

相続人に認知症の方がいる場合は生前対策を行いましょう

配偶者や自分の家族に認知症の方がいる場合は、遺言書の作成が有効です。

遺言書があると遺産分割協議書の作成が不要になります。ただし、内容に不備があったり、遺言書として認められなかったりした場合は遺産分割協議が必要になるため、法的信用力が高い公正証書遺言の作成がおすすめです。

 

さいごに

相続人に認知症の人がいた場合の、相続手続きについて解説しました。

認知症の方と一緒に相続手続きを行うには、後見人が必要です。後見人を立てずに法定相続分で分割したとしても、不動産を処分できなかったり預金を引き出せなかったりと不都合なことが多く起こります。後見人の選任には1~3か月かかりますので、困ったときにすぐに対処できるよう、早めに申立てを行うのがいいでしょう。

相続の事前対策ができるのであれば、遺言書の作成がおすすめです。公証人と一緒に作成する公正証書遺言であればさらに安心感が高まります。相続の手続きや事前対策は複雑なことも多いので、困ったときには税理士や司法書士といった専門家にご相談ください。

 

 

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