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寄与分とは?相場や計算方法について分かりやすく解説

更新日:2025.05.27

はじめに

相続でトラブルになるケースで多いのが、「寄与分」の問題です。

「長年親を介護してきたのに、他のきょうだいと同じ相続分だなんて不公平だ」「家業を無給で手伝ってきたんだから、その分相続割合は多くもらいたい」そう主張する相続人と、それを認めたくない相続人の間でもめごとになります。

この「貢献した分、相続割合を多くもらいたい」と主張するのが寄与分です。しかし、寄与分の主張が通るのは簡単ではありません。この記事では寄与分とはなにか、その要件や請求方法、注意点などについてまとめます。

 

寄与分とは

寄与分とは、被相続人(亡くなった人)の事業を手伝ったり、療養看護を行ったりして、その人の財産の維持や増加に貢献した相続人に認められる権利です。寄与分が認められた相続人は、他の相続人よりも多く遺産を相続できます。

 

寄与分が認められる要件

寄与分が認められるには次の4つの要件があります。

  1. 相続人であること
  2. 被相続人の財産の維持または増加に特別の寄与をしていること
  3. 特別の寄与が被相続人の生前に行われたものであること
  4. 寄与分は相続財産の範囲内であること

大前提として、寄与分を主張できるのは相続人のみです。

法律上婚姻していない内縁の妻や、子どもの配偶者は該当しません。そして、その行為が「特別の寄与」である必要があります。「特別の寄与」とは、通常期待される以上の行為です。例えば、同居の子どもが高齢の親を扶養することは通常期待されることになります。しかし、通常介護サービスを受けて行うことを全て子どもが行っていた場合には、通常期待される行為以上のことになるので「特別の寄与」と考えられるでしょう。つまり、一般的にあたり前と思われる行為については、寄与分は認められにくいということです。

 

寄与分の請求方法

寄与分の請求は遺産分割協議によって行います。遺産分割協議とは、相続人同士で誰がどの財産をいくら取得するか話合う場です。ここで相続人全員の合意が得られれば、問題ありません。しかし、他の相続人の合意が得られない場合は、家庭裁判所の調停または審判の手続きを利用することになります。

調停とは、家庭裁判所の調停員が入り、当事者間での話し合いを促す制度です。この話し合いで合意できないときは、審判手続きに移行します。審判では当事者双方の言い分を裁判官が判断し、決定を下します。なお、調停や審判が進行中であるからといって、相続税の申告期限は延長されません。相続税の申告期限までに、遺産分割協議がまとまらない場合は、一旦法定相続分で相続したとして相続税を計算し、申告と納税をします。その後、遺産分割協議が整い、先に申告した税額と異なった場合は、「修正申告」または「更正の請求」が可能です。

 

寄与分の相場と計算方法

寄与分の相場は事例によってさまざまです。要件のところにもあげたように、寄与分は相続財産の範囲内でのみ認められるので、相場が相続財産を超えているからといって全額主張できるわけではありません。また、反対に他の相続人が同意すれば、相場を超えた寄与分も認められる可能性があります。このように、寄与分の相場はあってないようなものです。とはいえ、どのくらいの額を主張できるのか参考になるように、多くの事例で用いられる寄与分の算定例を紹介します。

<家業を手伝った場合など>

本来もらえるはずの給与額×(1-生活費控除割合)×寄与年数

※生活費控除割合とは、寄与者の生活にかかる光熱費や住居費の負担がなかった(少なかった)ことを考慮したものです。無給または低賃金で生活ができるということは、生活にかかる費用のいく分かを被相続人に負担してもらっていたと考えられます。

<療養看護をした場合など>

ヘルパーさんなどに払う報酬×介護日数×裁量的割合

※裁量的割合とは、被相続人と寄与者との関係性や療養看護の程度などを勘案して決められます。

<被相続人の生活費を負担していた場合など>

負担扶養料×期間×(1-寄与者の法定相続分割合)

※被相続人に生活に十分な資産がある場合は、寄与分事態が認められない可能性があります。

上記はあくまでも例です。

寄与分は個別の事情で判断されるため、決まった算定方法がないことにご注意ください。

 

寄与分と特別寄与料のちがい

寄与分と似て非なるものに、特別寄与料というものがあります。特別寄与料とは、相続人以外の親族に認められるものです。以前の制度では、例えば義父の介護をしてきた嫁は、義父が亡くなっても相続人でないため寄与分を主張できませんでした。しかし、2019年7月1日に法改正が行われ、相続人以外の親族が寄与料を相続人に請求できるようになりました。

 

寄与分を主張する際の注意点

寄与分を主張する際の以下4つの注意点について説明します。

  1. 寄与分は認められにくい
  2. 寄与分を主張できる期間には制限がある
  3. 寄与分の財産評価は相続開始時になる
  4. 相続税申告後の場合、贈与税や所得税がかかる場合もある

詳しくみていきましょう。

寄与分は認められにくい

寄与分の主張は簡単に認められることは多くありません。相続人同士の関係が良好で、他の相続人の理解がある場合は遺産分割協議でまとまることもありますが、多くの場合は難しいでしょう。どこまでが通常期待されることかどうかは明確な基準がなく、人によって判断がわかれるからです。調停や審判手続きになった際には、寄与分を主張する根拠となる資料が必要になりますが、その収集も容易ではありません。したがって、遺産分割協議で合意されないと、寄与分の主張はかなり厳しくなると言えます。

寄与分を主張できる期間には制限がある

寄与分を主張できるのは、相続開始から10年です。2023年4月1日に施行された改正民法によって、相続開始から10年を経過した遺産分割には寄与分を適用しないと定められました。ただし、10年を経過する前に家庭裁判所に遺産の分割を請求している場合などは、10年経過後でも認められます。遺産分割協議が長期になると、寄与分に関する証拠が集めにくくなり、当事者の記憶も薄れます。遺産分割の早期の解決を促すため、このような改正が行われたのでしょう。寄与分の主張ができなくなる前に、具体的に動くことが必要です。

寄与分の財産評価は相続開始時になる

遺産分割での財産評価は分割時を基準として行います。一方、寄与分の財産評価時点は相続開始時です。寄与分を考慮した遺産分割を行う際には、相続開始時と遺産分割時の両方の評価が必要になるので注意しなければなりません。こうした計算は大変複雑ですので、専門家へ依頼するのがいいでしょう。

遺産分割後の場合、贈与税や所得税がかかる場合もある

他の相続人全員の合意を得て、寄与分のために遺産分割をやり直すことになった場合、贈与税や所得税がかかることがあります。遺産分割のやり直しといっても、税法上は新たな財産の移転になるからです。例えば、遺産分割のやり直しで、無償で財産を移転すれば贈与税の対象となりますし、対価を得て不動産などの財産を移転すれば譲渡所得税がかかります。この他、遺産分割をやり直すことでさまざまな手続きが必要になりますので、寄与分については遺産分割前に話し合うことが大切です。

 

さいごに

寄与分について説明しました。寄与分は相続人にのみ認められた権利です。被相続人の生前に、被相続人の財産の維持や増加に貢献した相続人が主張できます。相続人以外の親族が主張できる特別寄与料とは別の権利ですので、混同に注意してください。

寄与分は、基本的には遺産分割協議によって決められますが、他の相続人が同意しない場合は、家庭裁判所での調停や審判手続きを利用しなければなりません。寄与分は明確な基準がないので、相続人の間でもめることが多い問題です。もし生前の対策が間に合うのであれば、相続時にもめることがないよう、遺言書を作成することもおすすめです。

 

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