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遺言執行者とは?遺言執行者選びのポイント解説

更新日:2024.12.16

はじめに

遺言は亡くなった人の最期の意思を尊重するために重要な役割を担います。その意思を適切に実現するには、遺言執行者の選任が欠かせません。この記事では、遺言執行者とは何か、どのような役割を果たすのか、選任方法やメリット、注意点などを詳しく解説しています。遺言を実行する上で遺言執行者の重要性が理解でき、適切な遺言執行者選びのポイントが分かる内容となっていますので、ぜひ参考にしてください。

 

遺言執行者とは

遺言執行者とは、被相続人(亡くなった人)の遺言に従って、遺産の分割や遺産相続手続きを行う人のことです。遺言書に遺言執行者が指定されている場合は、その人が遺言執行者となります。遺言執行者の選任は義務付けられていません。従って、遺言執行者を立てるか否かは遺言者(被相続人)または相続人の意思によるところとなります。

遺言執行者の役割

遺言執行者の主な役割は以下の通りです。

・相続人に遺言内容を通知したり財産目録を作成し交付したりする

・被相続人の財産を調査・管理する

・遺言の内容に従って遺産を分割し、相続人に遺産を引き渡す

遺言執行者は、公正中立な立場から遺言の実現を図ります。また、相続人は遺言執行者の行為を妨げることはできず、遺言執行者は相続人の利益に反することであっても遺言書の内容を実現しなければなりません。

上記のほか、遺言執行者でなければ行えない手続きもあります。それは次の2つです。

・非嫡出子の認知を遺言で行う場合

・相続廃除を遺言で行う場合

非嫡出子とは、婚姻していない配偶者との間に生まれた子どもです。非嫡出子は法定相続人とならず、遺産をもらう権利がありませんが、遺言書によって認知することで相続人の権利が与えられます。この手続きは遺言執行者でなければできません。

相続廃除とは、特定の相続人から相続人としての地位を奪うことを言います。例えば、被相続人が生前にその相続人から虐待を受けていたといった場合です。この相続廃除の手続きも遺言執行者のみが行えます。

 

遺言執行者となれる人

遺言執行者は成人であって破産者でなければ、個人か法人かを問わず誰でもできます。弁護士や司法書士といった資格も不要です。ただし、遺言執行者はさまざまな法律行為を行わなければならず、全く手続きを知らない人が選任されるとかなりの負担となるでしょう。遺言書で遺言執行者を選任する際には、そうした手続きのことも考慮する必要があります。

相続人は遺言執行者となれるか

相続人も未成年者や破産者でなければ、遺言書で指定して遺言執行者とすることが可能です。ただし、相続人が遺言執行者となると、他の相続人との関係で争いとなる可能性が高く、あまりおすすめできません。相続人を遺言執行者に指定する場合は、遺言執行者が自分に有利なように遺言書作成に関与したのではないかと、他の相続人から懐疑的に見られないよう、遺言書作成においても配慮が必要です。

 

遺言執行者の選任方法とは

遺言執行者の選任は遺言書によって遺言者(被相続人)が指定する方法と、相続人が遺言執行者の選任を家庭裁判所に申立てる方法があります。それぞれについて詳しく説明します。

被相続人が自分で選任する

遺言執行者は、遺言者が自らの遺言書にて指定できます。遺言書に遺言執行者となる人の氏名、住所を明記し、遺言執行者とする旨を記載しましょう。遺言執行者に指定した人が自分よりも先に亡くなってしまった場合には、遺言書の書き直しが必要です。この点、例えば弁護士法人や税理士法人といった、法人を遺言執行者としておくと、法人が存続する限り遺言執行者を書き直す必要がないというメリットがあります。

相続人が遺言執行者の選任を申立てる

遺言書に遺言執行者が明記されていなかった場合で、遺言執行者の選任を必要とする際には、家庭裁判所に選任してもらう方法があります。被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所への申立てが必要です。申立てを行えるのは、相続人、遺言者の債権者、遺贈を受けた人といった利害関係人となります。

申立てに必要な書類は次のとおりです。

(1) 申立書

(2) 標準的な申立添付書類

・遺言者の死亡の記載のある戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本(全部事項証明書)

(申立先の家庭裁判所に遺言書の検認事件の事件記録が保存されている場合(検認から5年間保存)は添付不要)

・遺言執行者候補者の住民票または戸籍附票

・遺言書の写しまたは遺言書の検認調書謄本の写し

(申立先の家庭裁判所に遺言書の検認事件の事件記録が保存されている場合(検認から5年間保存)は添付不要)

・利害関係を証する資料(親族の場合,戸籍謄本(全部事項証明書)等)

遺言執行者の選任にかかる費用は、遺言書1通につき収入印紙800円分と、連絡用の郵便切手分となります。郵便切手については管轄の家庭裁判所によって異なりますので、ご確認ください。

家庭裁判所に遺言執行者選任の申立てを行う際には、候補となる人を立てることも可能です。申立書に候補者の氏名、住所、連絡先を記載することで、裁判所が遺言執行者に相応しいか否かの判断を行ってくれます。

 

遺言執行者を選任するメリット

遺言執行者を選任すると、以下のようなメリットがあります。

・被相続人の最期の意思が公正に実現される

・相続人同士のトラブルが抑制される

・相続手続きがスムーズに運びやすい

遺言執行者は、単独で遺言内容の実現に向けて手続きを行えるため、相続人に非協力的な人がいる場合や相続人同士が遠方で暮らしていて連絡が取りづらい場合でも、スムーズに手続きが進められます。

さらに、専門家を遺言執行者に指定すれば、一般の人には難しい法的な手続きも任せられて安心です。特に財産の種類や数が多い相続は手続きが複雑になりますので、専門家を遺言執行者とするメリットが大きいといえます。

 

遺言執行者を選任する際の注意点

遺言執行者を選任する際は、以下の点に留意する必要があります。

・中立的な立場で公平に職務を遂行できる人物を選ぶ

・十分な能力と経験があり、責任感のある人を選ぶ

・遺言執行者への報酬の有無や金額を明確にしておく

遺言執行者となる人は、相続人全員に対して中立的な立場の人を選ぶのが賢明です。特定の相続人に近い人物などは、他の相続人から疑念を抱かれ、無用なトラブルを起こす可能性があります。また、遺言執行者が行う手続きは複雑で専門性が必要なものも含まれるため、そうした手続きを任せられる人がいいでしょう。せっかく遺言執行者を指定しても、適切な執行が行えなければ意味がありません。

遺言執行者への報酬には決まりがないため、報酬の有無を含めて遺言書で明確にしておくことをおすすめします。士業などの専門家に依頼する場合はもちろんですが、身内であっても報酬についてしっかり決めておくと、遺言執行者と相続人との間のトラブル防止になるでしょう。

 

遺言執行者は辞退や解任できるのか

ここまでは遺言執行者の指定について解説してきましたが、遺言執行者に指定された人には辞退などの権利があるのか説明します。また、指定された遺言執行者が適切な手続きを行わないといった場合に、相続人はどういった対処ができるのかもみていきます。

遺言執行者の辞退

遺言執行者の辞退について説明する前に、辞退と辞任の違いについてお話します。遺言書によって遺言執行者に指定された人が、相続発生後に遺言執行者となることを承諾するか否かを決めるのは自由です。このとき、遺言執行者となるのを断ることを辞退といいます。他方、遺言執行者となることを承諾したのちに、遺言執行者としての職務を降りるのが辞任です。

遺言執行者とならない辞退の場合は、特に手続きは必要ありません。ただし、トラブル防止のために相続人全員に対して辞退(遺言執行者とならない)の意思を書面で示しておくのがいいでしょう。

これに対して、遺言執行者となったのちに辞める辞任の場合は、家庭裁判所へ辞任の申立てが必要です。家庭裁判所が辞任について「正当な理由」があると認めれば、辞任できます。何が「正当な理由」にあたるかは、事例によって異なりますが、病気や遠方への転勤といった理由が考えられるでしょう。単にやる気がなくなったといった理由では、認められない可能性もあります。

辞退や辞任ではなく、遺言執行者の職務を第三者に依頼できるかというと、可能です。令和元年7月以前は、他人に職務を行わせる際には「やむを得ない事由」が必要でしたが、法改正によってその文言がなくなり、遺言執行者の責任で他人に行わせることが可能となりました。例えば、相続登記だけ司法書士に依頼するというように、手続きの一部を任せることもできます。その際、相続人などの同意は必要ありません。ただし、第三者に職務を依頼する責任は遺言執行者にあるため、問題が起きた際には相続人から責任を追及される可能性があります。

遺言執行者の解任

指定された遺言執行者が適切に執行しない場合には、相続人は遺言執行者の解任を申立てられます。申立先は被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です。遺言執行者が「任務を怠っている」もしくは「(解任する)正当な事由がある」と、裁判所が認めたときに解任できます。裁判所の審判が出るまで、遺言執行者の権限は継続するため、審理中の遺言執行者の手続きを停止したいときは「遺言執行者の職務執行停止の審判」を解任の申立てと同時に提出しましょう。

 

遺言執行者を依頼した場合の報酬

専門家に遺言執行を依頼した場合には報酬が発生します。報酬の相場は遺産総額の1~3%としているところが多いようです。遺言執行の報酬以外に、交通費、通信費、相続財産の管理費、移転登記費、預貯金の解約や払い戻しにかかる諸費用などが追加でかかるケースもあります。

遺言執行者への報酬支払は、特段遺言書に指定がない限り、遺言執行が完了した時点で相続人全員が負担して支払います。通常は遺産から支払われることが多いでしょう。

 

さいごに

遺言執行者について説明しました。遺言執行者が指定されていると、相続手続きがスムーズに運ぶというメリットがあります。しかし、遺言執行者が行える職務権限は広く、とても複雑な手続きが多いため、一般の方が遺言執行者になると非常に負担が重くなります。遺言執行者は手続きの一部を他人に依頼することもできますが、責任の重さは変わりません。

遺言執行者を指定する際には、税理士といった相続の専門家がおすすめです。専門家であれば、中立な立場ですし、難しい手続きも安心して任せられます。遺言書作成の相談から遺言執行者の依頼まで、トータルで任せられる専門家を見つけるといいでしょう。

 

 

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