更新日:2024.04.16
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みなし贈与とは、贈与のつもりなくした行為が贈与と同様に扱われ、贈与税が課税されることをいいます。みなし贈与に明確な判定基準はなく、個別具体に判断されるのが現状です。では、どういった行為がみなし贈与とされるのか、みなし贈与を回避できる方法はあるのか、この記事を読んで参考にしてください.。
相続税法でのみなし贈与とは、文字どおり「贈与とみなされる」行為のことをいいます。
贈与は、あげる側ともらう側が贈与であるという認識のもとに行いますが、みなし贈与の場合は当事者間に贈与であるという認識は必要ありません。
つまり、贈与をしたつもりがなくても、行為の実態をみて贈与だとみなされるということです。
では、なにがみなし贈与となるのか、その判定基準はどこにあるのかについて以下で説明していきましょう。
当事者間に贈与であるという認識がないにも関わらず、贈与とみなされる「みなし贈与」。その判定基準は明確にはなっていません。
そもそもみなし贈与が定められた理由は、相続税の不正な回避を防止するためです。相続税は亡くなった方の遺産に対して課せられますので、生前に遺産を別の人や場所へ移すことで相続税を少なくする節税対策を行う人も出てくると思われます。
そのため、贈与契約はなくても「対価を支払わないで」または「著しく低い価額の対価で」「利益を受けた者」に贈与税を課して租税の公平性を保ち、不正を防止しているのです。
しかし「著しく低い価額の対価」の基準が明確に示されていないため、非常にわかりにくくなっています。
かつては、所得税法の規定を用いて、取得資産の時価の半分にも満たない額で資産の移動がなされたときは、みなし譲渡であるという運用がされてきました。
基準を明確にしたことで、時価の半額にならないように資産を移す事例が増え、逆に法の抜け道ができてしまったのです。
そこで、相続税法の改正を期にこの基準がなくなり、著しく低い対価かどうかは個別に、社会通念に従って判断されることになりました。
実務上の目安としては、時価の80%以上の価額であればみなし贈与とならないとされていますが、あくまでも個別具体的な判断となるので確実とは言えません。
また「利益を受けた」というのは、何かをもらって資産が増加した場合だけでなく、借金を免除してもらうといったことも含まれます。
なにももらっていないのに贈与税が課される可能性がある、という点に注意しましょう。
みなし贈与となる事例を紹介します。主な事例は以下の6つです。
・不動産や土地の譲渡
・株式の譲渡
・生命保険の名義変更
・借金の免除や返済の肩代わり
・自宅の名義変更
・離婚の財産分与
これらの事例以外にもみなし贈与となるものはあります。よくある事例の代表として紹介しますので、ご自身の事例については税理士に相談することをおすすめします。
土地や建物の不動産を身内に譲渡した際に、みなし贈与とされるケースがあります。
例えば、父から子へ時価8,000万円の土地を3,000万円で売却した場合などです。
先述において、実務上は時価の約80%未満の価格で譲渡すると、みなし贈与とされる可能性があるとお伝えしましたが、この例では80%どころか時価の半額よりも安い価格になっています。そのため、みなし贈与となる可能性が高いでしょう。
みなし贈与とされた場合、差額の5,000万円に対して贈与税が課されます。
株式の譲渡でみなし贈与とされるのは、非上場株式の譲渡で多くみられます。
例えば、非上場会社を経営する父から、後継者である子へ自社の株を譲渡する場合です。
株式の譲渡でも、みなし贈与の基準とされるのは時価の約80%未満という基準のため、子や身内に株式を譲渡する際には時価の80%を下回らないようにしましょう。
生命保険の名義を変更する際には注意が必要です。
これまでは父が生命保険を契約して保険料を納めてきたけれど、父が退職したため途中で契約者と受取人を子に変更することにした、という例があったとします。
この場合、生命保険が適用されて子が保険金を受け取ったときに、子に贈与税が課されることになります。
保険金の課税対象は、保険料を支払っている人が誰か、その保険金を受け取る人が誰かで決定されます。
つまり、父から子へ名義と受取人が変更されると、子へ利益が移転したことになるのです。
毎年60万円の掛け金で満期10年が経過すると600万円支払われる保険の場合、父が5年目で子へ名義変更を行うと、子は満期時に差額の5年の掛け金分について課税されることになります。
借金を免除してもらったり、返済を肩代わりしてもらったりしても、みなし贈与と判断されます。
借金の免除や返済の肩代わりによって、債務者は利益を得るためです。
特に多いのは親子間での金銭の貸し借りで、はじめから返済を期待せずに子に金銭を貸したような場合には贈与と同じことになりますし、利息が発生していない場合にも贈与とみなされます。
利息については、あまりにも少額であれば実務上は問題とならないケースが多いようです。
高額な貸し借りの際には、贈与と判断されるのを防止するためにも、金銭の貸し借りであるという覚書や契約書を作成しておくといいでしょう。
自宅の名義を変更する際にも注意が必要です。
例えば、父名義の実家の土地を子名義に変更する際に、土地の評価額が110万円を超えていると贈与税が課されます。
土地の評価額分を子が取得したことになるためです。
親子間だけでなく、夫婦間での名義変更も同様に贈与になります。
ただし、20年以上の婚姻関係のある夫婦の場合、配偶者の特別控除の特例が利用でき、2000万円まで贈与税はかかりません。
配偶者への贈与を行う際には、相続時に税額軽減の制度もあるため、生前贈与が適当か否かよく考える必要があります。
離婚における財産分与には原則として、贈与税はかかりません。
夫婦間の財産を分けるのが財産分与であって、片側の財産を移転することではないからです。
ただし、以下2つの場合にはみなし贈与となります。
・分与された財産が、婚姻中の夫婦の協力によって得られた財産の価額よりも多過ぎる場合
・離婚が贈与税や相続税を免れるために行われた場合
あまりにも多額の財産分与は、みなし贈与となる可能性が高いということです。
みなし贈与とならないための対策方法について説明します。
大きく分けると2つあります。
それぞれについて見ていきましょう。
贈与税には、一定額までの基礎控除やさまざまな非課税制度があります。みなし贈与とならないためには、これらの非課税制度を利用することも大切です。
ここでは、使用例が多い以下6つの非課税制度について説明します。
・贈与税の基礎控除
・相続時精算課税
・贈与税の配偶者控除
・生活費の贈与に関する非課税制度
・教育資金に関する非課税制度
・結婚・子育てに関する非課税制度
贈与税には、年間110万円の基礎控除制度があります。
一年間(1/1-12/31)で受けた贈与の額から110万円分を差し引けるという制度です。つまり、年110万円以内の贈与であれば贈与税がかからないことになります。
例えば、1,000万円を100万円ずつ10年間に渡って贈与することで、結果として1,000万円を非課税で贈与できるということです。
ただし、同じ人から毎年100万円の贈与があるといった場合には、「定期贈与」とみなされ課税される恐れもあります。
相続時精算課税とは、両親や祖父母から子や孫が贈与を受けたときに使える非課税制度です。
合計2,500万円まで非課税で贈与が行え、贈与の回数や贈与する財産の種類についての制限もありません。
非課税枠は各贈与者単位で利用できるので、祖父と祖母それぞれから2,500万円の贈与を受けることも可能です。
2,500万円を超えた分については、一律20%の贈与税がかかります。
贈与者が亡くなったときには、贈与された財産の価額を相続財産に入れて相続税を計算
しなければなりません。
制度名のとおり、相続のときに贈与を受けた分を清算するという制度です。
結婚して20年以上が経過した夫婦の間で、居住用の不動産の贈与を行う際には、110万円の基礎控除とは別に2,000万円まで非課税となる制度があります。
不動産そのものではなく、居住用の不動産を取得するための金銭でも適用できます。
ただし、居住用のための不動産というのが要件ですので、別荘などの贈与には適用されません。
また、配偶者控除が適用されても、贈与税以外の不動産取得税や登録免許税は非課税にはなりませんのでご注意ください。
夫婦や親子といった扶養義務者から、生活費や教育費のための贈与を受けた場合には贈与税はかかりません。
生活費とは通常の生活に必要な費用全般で、教育費とは学費や教材、文具費などです。
贈与税がかからないのは、生活費や教育費に直接使われるもので、預金をしたり株式を購入したりした場合は課税されます。
祖父母などから教育資金として贈与される場合に、1,500万円まで非課税となる制度があります。
要件は以下のとおりです。
・直系尊属(祖父母など)から令和8年3月31日※までに30歳未満の孫などへの贈与
・入学金や授業料といった教育に充てるための資金であること
・金融機関において教育資金口座を開設すること
・教育資金の払い出しの際には、領収書などを金融機関に提出すること
※令和5年12月時点の情報です
贈与者(祖父母など)が亡くなった際には、残った分の資産は贈与者から相続したという取り扱いになります。
例えば、祖父から1,500万円の教育資金のための贈与を受けて、祖父が亡くなった際に500万円が残っていたとすると、500万円は祖父から相続したことになるのです。
孫が相続する場合、相続税の2割加算というルールが適用されます。
2割加算のルールとは、配偶者や1親等内の親族以外の人が相続人になった際に適用されるものです。
令和2年3月31日まで教育資金の贈与には適用がなかったのですが、法改正により、令和3年4月1日以降の贈与から2割加算が適用されるようになりました。
また、教育資金の贈与契約が終了する際に残金がある場合は、残金について贈与税の対象となることもあります。
教育資金の非課税制度を利用する際には、相続時のことも踏まえて計画することが大切です。
両親や祖父母から、結婚や子育てに必要な資金を贈与された場合に利用できる非課税制度があります。
この非課税制度を利用できる要件は以下のとおりです。
・令和7年3月31日※までに18歳以上50歳未満であること
・直系尊属(父母や祖父母など)からの贈与であること
・金融機関との契約によって結婚・子育て資金口座を開設すること
・贈与を受けた人が、金融機関に結婚・子育て資金非課税申告書の提出を行うこと
※令和5年12月時点の情報です
上記の要件を満たした場合、1,000万円まで非課税の適用が受けられます。
ただし、教育資金の贈与と同じように、贈与者が亡くなった場合には残金について相続税が課される可能性があることや、契約終了時に残っている価額に贈与税がかかる可能性もあります。
孫が贈与を受けて、契約期間中に相続になった際には、残金に対してかかる相続税に2割加算されることもご注意ください。(令和3年4月1日以降の贈与から)
みなし贈与とされないために利用できる非課税制度を紹介しましたが、それぞれの制度にはとても細かい要件が定められています。
説明した要件以外にも詳細な条件分岐があるため、ここでは概要のみを紹介しました。
非課税制度を利用するにしても、制度についてしっかり理解するのは簡単なことではありません。
制度の要件などを間違えた結果、非課税にならなかったということがないように、大きな財産を贈与する際には税理士へ相談することをおすすめします。
みなし贈与について説明しました。
みなし贈与は、あげる側受け取る側に贈与の意思がなくても、実体をみて贈与と同じと判断される場合に課税されるというものです。
何がみなし贈与となるかの基準は明確にはなく、個別に判断されます。
ただし、不動産などにおいては時価の80%以上の価額であれば、実務上は贈与とみなされないことが多いようです。
みなし贈与となって思わぬ課税を受けないためにも、何が贈与にあたる行為かを把握し、利用できる非課税制度をうまく活用するのがいいでしょう。
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