更新日:2024.01.26
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経営者の親から相続を受けるときの手続きと注意点について、前回の記事からの続きで紹介をしていきます。
被相続人が経営者である場合に、その相続人が気を付けるべきこととして、経営者の「個人保証」があります。
ここでは、個人保証とはなにか、対応方法としてどういったものがあるのかについて説明します。
個人保証とは、会社の債務に対して社長個人が連帯債務を負うことをいいます。つまり、社長が会社の借金の連帯保証人となるということです。
信用力が弱い中小企業で多く行われる方法で、個人保証によって融資が受けられるというメリットがある一方、経営者個人の財産を失うリスクがあります。
被相続人の連帯債務者という地位は相続人に引き継がれるため、会社の業績によっては大きなリスクです。
経営者の相続人は、この個人保証についてもしっかり調べなければなりません。
法人の経営がうまくいっていないのであれば、相続放棄も検討しましょう。
相続放棄を行えば、プラスの財産もマイナスの財産も引き継ぐことはありません。
ただし、相続放棄は相続人となったことを知った日から3か月以内に裁判所へ申し出を行う必要があります。
相続放棄の手続きの前に相続財産の処分を行うと、相続することを承認したとみなされ、相続放棄が認められませんのでご注意ください。
まだ相続が発生していなければ、できるだけ個人保証を外して相続対策を行いたいところです。
ではどのような方法があるのか、個人保証を外す方法として以下3つの方法を紹介します。
別の保証人をたてることで、社長の個人保証を外す方法があります。
例えば、現社長が引退するため、新社長に新たに個人保証してもらうといったことです。
ここで注意が必要なのが、個人保証の性質です。個人保証は金融機関と保証人の間で結ばれる契約のため、一方が勝手に契約の変更を行うことはできません。
新社長に新たに個人保証してもらうと決めても、金融機関が承諾しない限り実現しないことになります。
金融機関が新社長の経営手腕に疑問を抱いた場合は、この方法で個人保証を外すのは難しくなるでしょう。
担保となり得る物的財産がある場合は、そちらを提供することで個人保証を外せる可能性があります。
担保の対象となるのはさまざまですが、主に土地や建物といった不動産です。
金融機関側からすれば、人的担保である個人保証よりも、物的担保の方が確実性があります。
ただし、どんな物的担保でもいいわけではありません。物的担保として認められるとめには、一定の担保価値が必要です。
他の金融機関で借り替えを行い、融資を受けている銀行に現金一括で返済を行うことで個人保証を外す方法があります。
個人保証なしで、借り替えに応じてくれる金融機関があることが前提です。
個人保証については、政府も以前から問題視してきました。そこで、平成25年に「経営者保証に関するガイドライン」が策定され、以降、金融機関に対して個人保証をできるだけ行わない方針とすることが求められています。
とはいえ、金融機関もすべて担保なしで対応するわけにはいきません。
そこで、「経営者保証に関するガイドライン」では金融機関が個人保証を求めずに融資を行う目安として、次の3つの事項を掲げています。
(1)法人と経営者の関係の明確な区分・分離
(2)財務基盤の強化
(3)経営の透明性
それぞれの項目についてみていきましょう。
融資を受けたい企業は、法人と社長の間の資金のやり取りを「社会通念上適切な範囲」を超えないように、体制を構築していることが求められます。
また、その体制や運用状況を税理士などに確認してもらい、債権者である金融機関に公開することも推奨されています。
融資を受けたい場合は、財務状況や業績の改善に取り組み、返済能力の向上によって信用力を強化しましょう。
財務状況などを金融機関からの求めに応じて、正確に開示することが大切です。
また、事業計画や業績見通しに変化が生じた場合には、自ら金融機関に報告を行うことで、双方の信頼関係を築く必要があります。
金融機関に報告する情報は、税理士などの外部機関が検証を行ったものが望ましいです。外部機関の検証があることで、その情報の信用性が高まります。
上記3つの対応を行っていれば、借り換えによって個人保証を外せるでしょう。もしくは、借り換えを行わずに個人保証を外す交渉もできるかもしれません。
とくに、中小企業は(1)の法人と社長の間の資金のやり取りが不明瞭なことが多いので、まずはしっかり資金を分けることが大切です。
経営者の相続では、生前の対策が重要です。
経営者が亡くなると、相続人が自社株を相続しますが、自社株の相続人が特定されていないと、遺産分割協議で株式が分散する可能性があります。
株式が分散すると会社の意思決定が迅速に行えません。
また、株式の分散が長期化すると、相続などによってさらに細分化され、最終的には株主が誰か把握することが難しくなる恐れもあります。
こうした事態を防ぐためには、相続の生前対策が必要です。
事業の後継者が決まっている場合には、事業承継税制の活用も検討しましょう。事業承継税制では、一定の要件を満たすと相続税や贈与税の支払いが猶予または免除されます。
ただし、事業承継税制には細かい要件があるので、相続に詳しい税理士に相談すると安心です。
特定の相続人に自社株を相続させたいときには、遺言書で相続人を指定する方法があります。
遺言書の作成にもさまざまなルールや検討しておくべきことがありますので、せっかくの遺言書が無効とならないためにも専門家へ相談することをおすすめします。
前回と今回の記事では、
経営者の親が亡くなった際の相続について説明しました。
経営者が亡くなっても、法人と個人は別人格のため、法人の債務などは相続しません。ただし、被相続人が法人の借入れを個人保証している場合は、連帯債務である個人保証も相続されます。
相続税は被相続人が保有している自社株や、会社への貸付債権に課されます。
会社の業績が悪く貸付金が返済されないと、相続税だけがかかることになり、相続人には一切の利益もありません。
まだ相続が発生していないのであれば、社長の個人保証や会社への貸付金は見直しを行いましょう。
また、相続によって自社株が分散しないよう、相続の生前対策も検討してください。
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