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相続税がかからない財産とは

更新日:2023.07.19

はじめに

相続財産の中には相続税がかからないものがあります。

何が非課税財産か知らずに相続税の試算をすると、実際よりも「相続税がたくさんかかってしまう!」と不安になったり、将来の相続対策に悪い影響を及ぼす可能性もあるかもしれません。

この記事では、何が非課税の財産なのか、非課税財産を考えるときに注意しなければいけないことは何かについてお話しますので、参考になれば幸いです。

 

相続財産の計算方法

相続税の計算は下記の通り行います。

相続財産-(非課税財産+債務+葬儀費用)=純資産価額※1

純資産価額+生前贈与分の財産※2=課税価額

※1相続時精算課税制度を利用して取得した財産は、純資産価額に含めます

※2相続開始の7年前までに行われた贈与分を相続財産に加算します。2024年以降の贈与から、期間が3年前から7年前へ延長されました。

 

相続財産とは、被相続人が亡くなる直前まで保有していた財産の全てです。主なものは、土地や建物、現金、株式、借地権などがあります。生命保険金や死亡退職金といったみなし相続財産も含まれます。みなし相続財産については後の章で説明します。

 

相続税を計算するには、この相続財産から相続税のかからない財産と債務や葬儀費用を差し引く必要があります。

では、どういったものが相続税の対象外となるのか、一つずつ見ていきましょう。

 

非課税財産の種類

相続税の対象とならない財産は法律で規定されています。ここでは下記4つについて説明します。

・仏壇などの日常礼拝に使用するもの

・生命保険金・退職手当金

・公益目的の事業者が取得した財産

・国や地方公共団体などへの寄付金

 

仏壇などの日常礼拝に使用するもの

墓地、墓石、仏壇、仏具、仏像、神棚、庭内神し(ていないしんし)など、日常礼拝をおこなっているものは相続税がかかりません。庭内神しとは、稲荷や地蔵などの敷地内に祀られたご神体で、日常的に礼拝を行うためのものをいいます。

墓地や墓石は地域によっては価格も高額になります。生前に購入することで相続税対策にも有効です。ただし、ローン残高が残った状態で相続が発生すると、その負債は相続財産から差し引けません。そもそも墓地や墓石は非課税なので、差し引くべき債務にはならないからです。相続税対策として墓地や墓石を購入するのであれば、現金での一括購入が最も効果的です。

仏壇や仏具も非課税対象ですが、高価な装飾や骨董として価値があるようなもので投資対象となる場合は、課税されることがあります。売りに出したときに、購入される価値があるか否かで判断すると分かりやすいでしょう。

 

生命保険金・退職手当金

被相続人が保険料を支払っていた生命保険金や、被相続人の死亡によって支払われた退職金を相続人が受け取った場合は、非課税枠を超えた部分に相続税がかかります。受取人が相続人以外のときは非課税枠の適用はありません。

非課税枠は、生命保険金も死亡退職金も「500万円×法定相続人の数」で計算された金額です。「法定相続人の数」には、相続放棄をした人がいた場合も、その人を含めて考えます。

法定相続人にの中に養子がいるときには、実子がいるか否かで含める人数が異なります。実子がいるときは1人、実子がいないときは2人まで含めます。

<生命保険金と死亡退職金の非課税枠の計算式>

非課税限度額=500万円×法定相続人の数

 

 「みなし相続財産」とは

本来は相続財産ではないけれど、課税の公平性をはかるために、相続財産として扱うものを「みなし相続財産」といいます。生命保険金や死亡退職金は、民法上は受取人固有の財産ですが、相続財産とみなして課税されます。

しかし、何がみなし相続財産になるかの判断は複雑です。生命保険金であれば契約内容によってみなし相続財産となるかどうか判断が変わります。

一般の方ではその判定は難しいため、わからないと思ったときには税理士に相談するのがよいでしょう。

 

 「みなし相続財産」の注意点

生命保険金や死亡退職金は受取人固有の財産ですので、相続放棄をしても受け取れます。ただし、相続放棄によって相続人とみなされなくなるため、生命保険金や死亡退職金の非課税枠はなくなります。

では、相続税の基礎控除はどうかというと、基礎控除は適用されます。つまり、生命保険金や死亡退職金が基礎控除内であれば相続税はかかりません。

相続放棄は手続きをしてしまうと撤回できませんので、慎重な判断が必要です。

 

公益目的の事業者が取得した財産

公益を目的とした事業を行う人が取得した財産には、相続税がかかりません。ただし、公益目的の事業であれば全て非課税となるわけではなく、下記のような要件があります。

 

<公益目的事業者が取得した相続財産が、非課税となる要件>

(1)公益の増進への貢献度が高い事業

(2)公益事業を専業として行っていること

(3)事業者やその親族などが、その事業から特別な利益を得ていないこと

(4)相続によって取得した財産を、取得した日から2年が経過した日までに公益目的事業に利用していること

(5)財産を取得したのが社団であるときには、(1)~(4)に加えて、その社団が親族や特別な関係がある人などによって私物化されていないこと

 

これらの要件を満たす場合には相続税が非課税となります。事業の規模としては、その地域や分野で社会的存在として認識される程度が必要で、その事業を行うための設備や財産をもっていなければいけません。あまりにも小規模な場合は、事業として認められない可能性もあります。

上記の要件を満たしているかの判断は大変難しいので、税理士に相談するのがいいでしょう。

 

国や地方公共団体などへの寄付金

相続人が相続した財産を国や地方公共団体、公益を目的とする事業を行う法人または認定非営利活動法人などへ寄付した場合には、寄付した財産や金銭について相続税が非課税となります。

ただし、相続税の申告期限を過ぎてから寄付を行ったり、不動産や有価証券などの相続財産を現金化して寄付を行ったりすると、要件を満たさなくなるため非課税にはなりません。

 

<寄付を行った相続財産が非課税となる要件>

(1)寄付した財産は、相続や遺贈によって取得した財産そのものであること

(2)その取得した財産を相続税の申告書の提出期限(10か月以内)までに寄付すること

(3)寄付した先が国、地方公共団体、教育や科学の振興などに貢献することが著しいと認められる、公益を目的とする事業を行う特定の法人(以下「特定の公益法人」といいます)であること

 

(1)相続や遺贈によって取得した財産には、生命保険金や死亡退職金も含まれます。(2)相続税の申告書に、寄付による非課税の特例を受けるということを記載し、寄付をした財産の明細書といった書類の添付が必要です。(3)「特定の法人」は寄付の時点で既に設立している法人でなければいけません。

 

注意点として、寄付をした団体が寄付を受けてから2年を経過する日までに、公益を目的とする事業などに利用していない場合、非課税の適用が受けられないことがあります。

また、寄付をした人やその親族などが、寄付先の団体から利益を得ているといった場合にも非課税の適用はありません。相続税を不当に減らすために寄付をしているとみなされるためです。

さらに、不動産や有価証券といった現金以外の財産の寄付は、受け付けてもらえないこともあります。寄付先で現金化するために経費がかかることや、そもそも現金化できない可能性があるからです。

非課税の適用を受けるためには、相続した財産そのままを寄付しなければなりません。現金以外の寄付を検討している場合は、事前に寄付先に確認しましょう。

 

補足:遺言書による寄付

被相続人(亡くなった方)が遺言書で寄付を行う方法が「遺贈」です。寄付先が公益性のある団体でなくても、法人であれば相続税はかかりません。相続税は個人が相続した場合に課せられる税だからです。ただし、公益事業を行っている個人であれば非課税となります。法人については相続税ではなく、法人税が課税されます。

 

遺言書を書くときには、遺贈する資産と寄付先を明確に示します。曖昧な記載内容では、被相続人の希望通り寄付が行われないかもしれません。希望通りの寄付の実現と、相続人同士でのトラブルを防止するためにも、公証人による公正証書遺言で作成するのがいいでしょう。

 

遺贈では、他の相続人の遺留分(相続人に確保された最低限度の財産)を侵害する恐れもあるので、相続に詳しい税理士に相談するのがよいでしょう。

 

 

最後に

相続税の計算を行ううえで、非課税財産の把握は非常に重要です。墓地や墓石のように、生前に購入することで相続税対策に活用できることもあります。

しかし、非課税財産となるか否かの判断は複雑でわかりにくいため、不安がある場合は税理士にご相談ください。

 


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