更新日:2019.10.29
1.はじめに
近時、約40年ぶりに相続法が改正されました。
今回の改正の特徴は、①配偶者の保護、②遺言の利用の促進、③相続人を含む利害関係人の実質的公平を図ること、の3点にあります。
まず、今回は、配偶者の保護についてお話しします。
2.配偶者の保護
被相続人(亡くなった方)の配偶者は、通常、住み慣れた自宅に被相続人の死後も住み続けたいと望む場合が多いでしょう。
以前の相続法では、この希望を実現するには、遺言や遺産分割により自宅を相続するほかありませんでした。
しかし、遺産分割では、自宅の評価額が高くなってしまうことも多く、そうなると、配偶者はそれ以外の財産(現金や預貯金など)を確保できなくなってしまうという問題がありました。
そこで、今回の改正では、「配偶者居住権」と「配偶者短期居住権」という2つの制度が設けられました。
3.配偶者居住権
配偶者居住権とは、配偶者が、被相続人が亡くなった時点で、被相続人が所有する建物に住んでいた場合に、その建物も無償で住むことが認められる権利です。この配偶者居住権は、原則として、配偶者が亡くなるまで認められます。
配偶者居住権が認められるのは、遺産分割協議や調停で、配偶者居住権を認める合意ができた場合や、配偶者居住権を遺贈する旨の遺言があった場合です。
4.配偶者短期居住権
配偶者短期居住権とは、配偶者が、被相続人が亡くなった時点で、被相続人が所有する建物に住んでいた場合に、原則として遺産分割協議が成立するまでの間、その建物に無償で住むことが認められる権利です。
これにより、配偶者は、相続開始から最低6ヶ月の間は、自宅に住み続けることができるようになりました。
5.適用開始の時期
配偶者居住権と配偶者短期居住権は、2020年4月1日から施行されます(2019年7月1日ではないので注意が必要です)。