更新日:2023.10.30
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亡くなった方の銀行口座は、取り引きの一切ができないように凍結されます。
では、いつ口座は凍結されるのでしょうか?凍結されたあとに引き出すことはできるのでしょうか?
この記事ではこのような疑問について解説します。
銀行口座は、名義人が亡くなると一切の取り引きが停止されます。
引き出しはもちろん、口座引き落としなども行われません。その口座を生活費の支出元として利用していた場合は、名義人が亡くなったことにより当面の生活費も引き出せなくなってしまいます。
銀行口座はいつ凍結されるのかというと、銀行が名義人の死亡を知ったときです。
多くは、名義人の家族などから銀行に知らされたときになります。役所へ死亡届を提出すると銀行口座が凍結されると思っているかたもいらっしゃいますが、役所から銀行へ連絡がいくわけではありません。まれに、新聞の訃報記事から銀行が知るといったケースもあります。
銀行に知らせないままでいると、他の相続人に不当に引き出される可能性もあるため、口座名義人が亡くなったときには銀行への届け出も忘れないようにしましょう。
被相続人の口座から資金を引き出すには、凍結の解除が必要です。
凍結の解除は、遺産分割協議といった相続の手続きが終了するか、相続人全員の同意がなければ行われません。
口座凍結の解除の手続きや必要書類は各銀行で多少異なりますが、一般的なものをご紹介します。
自筆証書遺言で、自宅などで保管していたときは家庭裁判所の検認済証明書が必要です。
公証役場で作成する公正証書遺言や、法務局の自筆証書遺言書保管制度を利用している場合は不要です。
この他、口座名義人の戸籍謄本と法定相続人を確認できるすべての戸籍謄本、口座の資産を受け取る人の印鑑証明書、通帳が必要です。
遺言書がない場合は、遺産分割協議などで誰がいくら預貯金から相続するのかを明確にする必要があります。
遺産分割協議書があれば、金融機関に提出します。その他、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本、法定相続人であることを確認できる全ての戸籍謄本、相続人全員の印鑑証明書が必要です。
凍結された被相続人の預金口座から、銀行窓口で相続人単独で一定の額まで引き出せる制度が「相続預金の払戻制度」です。
凍結口座からお金を出すには、先に説明したとおり凍結の解除を行わなければなりません。
しかし、解除に必要な遺産分割協議や相続人全員の同意を得るのに時間がかかり、葬儀費用や相続人の生活資金といった、すぐにでも用意しなければいけないお金を工面できないという問題がありました。
そこで、相続人の生活保護などを目的として、遺産分割協議前に相続預金を払い戻せる制度が2019年より開始しました。
払い戻す金額によって手続きが異なりますので、下記にて説明します。
払い戻しを受けられる上限額は、下記のうち低い方の金額までとなります。
・死亡時の預貯金残高×法定相続分×3分の1
・150万円
上限額は口座毎に計算しますが、同一金融機関(同一金融機関の複数の支店に相続預金がある場合はその全支店)から払い戻しを受けられる上限額は150万円です。
計算例として、妻と子ども2人が相続した例を考えてみます。妻の法定相続分は2分の1、子の法定相続分はそれぞれ4分の1ずつです。
<被相続人の預金>
M銀行に2,100万円
K銀行に600万円
<妻の払い戻し上限額>
M銀行:150万円
2,100万円×2分の1×3分の1=350万円 350万円>150万円
K銀行:100万円
600万円×2分の1×3分の1=100万円 100万円<150万円
<各子どもの払い戻し上限額>
M銀行:150万円
2,100万円×4分の1×3分の1=175万円 175万円>150万円
K銀行:50万円
600万円×4分の1×3分の1=50万円 50万円<150万円
妻はM銀行K銀行合わせて250万円、子どもはそれぞれ合計200万円まで払い戻しを受けられます。
払い戻し手続きに必要となる主な書類は下記の3種類です。金融機関によって求められる書類が異なりますので、手続き時に確認することをおすすめします。
<必要書類>
・被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本
・相続人全員の戸籍謄本
・預金の払い戻しを希望する人の印鑑証明書
払い戻しの上限額以上の資金が必要なときは、家庭裁判所で預貯金の「仮分割の仮処分」手続きを行うことで法定相続分まで払い戻しを受けられます。
ただし、仮分割の仮処分手続きには下記の要件があります。
<仮分割の仮処分を受けるための要件>
・家庭裁判所に遺産分割の審判や調停が申し立てられていること
・相続預金の仮払いの必要性があること
・共同相続人の利益を害さないこと
相続預金の払い戻しを受けると、相続放棄ができなくなる可能性があります。払い戻しを受けたことで、相続人となることを承認したとみなされるためです。あとから被相続人に借金があることが分かっても、相続放棄ができなくなります。
相続放棄の可能性がある場合には、相続預金の払い戻しは慎重に行いましょう。
また、払い戻しを受けた資金を何に使ったか、しっかりと記録しておくことも大切です。
使途が不明な場合、他の相続人との間でトラブルになる可能性もあります。領収書などの書類は忘れずに保管しておきましょう。
亡くなった方の銀行口座は、銀行が名義人の死亡を知ったときに凍結されます。
多くは家族からの届け出によって行われるため、トラブル防止のためにも早めに手続きを行いましょう。
相続手続きが終了すると口座の凍結を解除できます。葬儀費用や生活費などで早急に資金が必要なときは「相続預金の払戻制度」が利用できます。
手続きに必要な書類は各金融機関で異なるため、事前に必要書類を確認し取り寄せを行うとスムーズです。
「相続預金の払戻制度」はとても便利ですが、相続放棄ができなくなったり、相続人同士でのトラブルに発展したりしますので、慎重に行う必要があります。
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