更新日:2020.03.22
1.はじめに
今回は、遺言の利用の促進の点についてお話しします。
2.自筆証書遺言の方式緩和
これまで、自筆証書遺言は、作成者が全文を自書しなければならないとされていました。
しかし、高齢者に遺言書の全文を自書させることは大きな負担であり、これが自筆証書遺言の利用を難しくしている一因だと考えられてきました。
そこで、今回の改正では、自筆証書遺言において相続財産等の目録を添付する場合、その目録については、自書でなくても、パソコン等で作成することができるようになりました(ただ、パソコン等を使用して作成した目録の各ページに署名押印をしなければならない点に注意が必要です)。
3.自筆証書遺言の保管
これまで、法務局は、自筆証書遺言を預かったり保管したりすることはしていませんでした。
そのため、遺言者が自筆証書遺言を自宅の机の中に入れておいて紛失させてしまう、悪意のある相続人が破棄してしまう、といった事態が生じることがあり、これが自筆証書遺言の問題点だとされていました。
今回の改正では、法務局にて自筆証書遺言の保管ができるようになり、自筆証書遺言を自宅で保管しなくて済むようになります。
これにより、遺言の執行をより確実にすることが期待できると言われています。
4.遺言執行者の権限の明確化
これまでは、遺言執行者の地位や権限について、一般的・抽象的な規定があるだけで、遺言執行者は誰のために職務を遂行するか、特定の場合に具体的にどのような権限を有するかといった点が明確ではありませんでした。
そこで、今回の改正では、この点を明確にすべく、遺言執行者がどのような地位で、どのようなことができるのかについて明文で規定されました。
例えば、遺言執行者は、次のようなことができることとされています。
・対抗要件具備のために必要な行為をする権限(不動産の登記申請を行うことなど)
・預貯金の払戻し・解約をする権限
5.適用開始の時期
原則として、施行日は2019年7月1日です。
もっとも、自筆証書遺言の方式緩和については2019年1月31日、遺贈については2020年4月1日が施行日です。
弁護士 乾 亮平