目次
はじめに
多数の企業で副業が解禁されたため副業を始めた方や、以前から副業はしていたが本業に切り替えて個人事業主として活動を始めた方が、近年急速に増加しています。
会社に勤めて給料を受け取るのみのサラリーマンの方であれば、会社に税金の計算(年末調整)をしてもらえるので、ご自身で申告(確定申告)をするケースは限られるのですが、副業をしている方や個人事業主については、ご自身の収入や支出を自ら集計して税務申告をすることになるので、まず何から始めたらいいのかわからず途方に暮れる人もいるかもしれません。
売上はご自身でも「いつ、いくらの売上があった」と把握しやすいものとなりますが、経費は仕事で支払ったものとプライベートで支払ったものが混在するため、その線引きが難しく、ご自身で判断するのが難しいものとなります。
この記事では、確定申告で事業の経費となる支出についてまとめます。
確定申告とは
そもそも「確定申告」とは?
ここでは確定申告について、おさらいをします。
すでに確定申告をした経験があり、確定申告で何をするのかわかる方は、次の「経費の範囲とは」に進んで問題ありません。
一般的に「確定申告」とは、個人に対する所得税の申告を指すことが多いです。類似する税金として、法人税がありますが、法人税の場合は「決算」で法人税の申告を指すことが多いです。
所得税の確定申告については、国税庁ホームページにおいて「所得税の確定申告は、毎年1月1日から12月31日までの1年間に生じた所得の金額とそれに対する所得税等の額を計算して確定させる手続です。源泉徴収された税金や予定納税額などがある場合には、この確定申告によってその過不足を精算します。」と明記されています。
先述のとおり、会社に勤めて給料を受け取るのみのサラリーマンの方については、会社が給与金額を把握していることから、年末調整と呼ばれる手続きをして社員の所得税の確定と所得税の納税をするため、ご自身で確定申告をするのは、住宅ローンの初年度や医療費控除などのケースに限定されます。
確定申告の対象となる活動は10種類に分類されます
確定申告の対象となる所得は、以下の10種類に分かれ、それぞれの所得について、収入と必要経費の範囲又は所得の計算方法が定められています。
1.利子所得 2.配当所得 3.不動産所得 4.事業所得 5.給与所得
6.退職所得 7.山林所得 8.譲渡所得 9.一時所得 10.雑所得
個人の所得の範囲は広く捕捉できるように定められていますが、個人事業主の場合には、4.事業所得に該当するケースがほとんどとなり、副業をしている方であれば10.雑所得に該当するかどうかの検討が必要となります。
経費の範囲とは
事業の経費と所得控除の違い
事業の経費になるかどうかの検討においては、ご自身が生活をする中で支払うものを、おおむね3つに区分することで確認をすることになります。
- 所得控除の対象となる支出
- 事業の経費となる支出
- 1と2に該当しない支出(プライベートの支出)
まず1.所得控除の対象となる支出について、説明をします。
所得控除は先述の10種類の所得の合計から差し引くものとなり、事業との関連性よりはその人の個人的な事情を加味して税負担を調整するもので、次のものがあります。
①雑損控除 ②医療費控除 ③社会保険料控除 ④小規模企業共済等掛金控除 ⑤生命保険料控除 ⑥地震保険料控除 ⑦寄付金控除 ⑧障害者控除 ⑨寡婦控除 ⑩ひとり親控除 ⑪勤労学生控除 ⑫配偶者控除 ⑬配偶者特別控除 ⑭扶養控除 ⑮基礎控除
ここで間違えやすいものとしては、⑦までの支出を所得控除でなく、事業の経費として処理してしまうことです。支払い時は、所得控除と事業の経費の区別なく支払いをしていると思いますが、税務上での取り扱いは異なるため注意が必要です。
次に2.事業の経費となる支出と3.1と2に該当しない支出について、説明します。
事業の経費とプライベートの支出を分ける
さて、上記で所得控除となる支出を確定させたら、事業の経費に該当するか否かの判断になります。
事業の経費になるかどうかについては、国税庁ホームページでは「必要経費とは、収入を得るために直接必要な売上原価や販売費、管理費その他費用」と定めています。
難しい言い回しになっていますが、シンプルにとらえるのであれば「この支出をすることで、事業活動ができているもの」と言い換えてもいいと思います。
具体的には、ご自身の仕事をするために購入したパソコン、プリンター、紙やインクなどの消耗品、作業服や軍手など現場で必要な物品の購入、取引先と打ち合わせるための交通費や打合せ時の飲食代は事業の経費に該当します。逆に、観光目的の交通費や宿泊費、個人的な趣味の支出、友人との会食(仕事の話は一切なし)などは、仕事と直接的な結びつきはないと考えられるため、プライベートの支出となり経費にはなりません。
自宅で仕事をしているときに経費となるものとは
個人事業主の中には、ご自宅で仕事をしている方もたくさんいらっしゃると思います。そうなると自宅はプライベート空間であるのと同時に、仕事をする空間にもなります。
「仕事をする空間」ということは、上記の「収入を得るために直接必要な...」にも該当するのでは?と思われるかもしれません。これについても国税庁ホームページで「家事上の経費は必要経費になりませんが、家事上の経費に関連する経費のうち、事業所得を生ずべき業務の遂行上必要である部分を明らかに区分することができる場合のその部分に相当する経費の金額は必要経費となります。」と定めています。
こちらもシンプルにとらえるのであれば、「自宅で発生する家賃や光熱費についても、一部は事業の経費として認めますよ」というものになります。その場合は、どの程度まで認められるかの判断が必要となります。
最後に
この記事では、個人事業主の経費について説明をしました。
所得控除、事業の経費、プライベートの支出にわけることが必要となりますが、これをご自身ですべて判断するのは慣れないうちは難しいかもしれません。
税理士法人アイフロントでは、個人事業主の確定申告も多数対応しておりますので、不明な点がありましたらお気軽にご相談ください。